11.3  強力短パルス中性子ビームで新たな科学革命を
   


図11-4  高効率のターゲット-モデレータシステム

 


図11-5  定常中性子ビームと比べて、長パルスビームではピーク強度が約20倍に、短パルスビームでは約60倍にも増大します。中性子散乱にはこのような高いピーク強度のビームが極めて有用です。

 


図11-6  この原理に基づいた低エネルギー分光器を大強度の短パルス中性子ビーム源(5MW)に設置すると、現在の100倍以上(国内では1,000倍以上)の精度でミクロな世界の動きをとらえることができます。

 


 中性子散乱は物質科学に極めて有用な研究方法です。この方法により、これまでに超伝導、磁性、相転移など多くの自然現象が解明されています。この研究は主に原子炉を利用した定常中性子ビームにより達せられましたが、中性子科学研究センターでは、陽子加速器による桁違いに強い短パルス中性子ビームの利用を検討しています。
 その結果、高効率のターゲット-モデレータシステムを利用すると時間平均強度一定の場合、短パルスビームではピーク強度が約60倍に増大することが明らかとなりました。この高いピーク強度は非弾性散乱実験に有用で、5MWの短パルス中性子ビーム源に図のような低エネルギー分光器を設置すると、100倍以上の分解能でミクロな世界の動きをとらえることができます。この施設が実現すれば、生命科学や極限環境下の物質科学に新たな革命がもたらされるものと期待されます。このことは、ハッブル宇宙望遠鏡により宇宙の深遠さがより身近なものとなったように、ミクロな物質世界の精緻さと生命の仕組みがより分かり易く私たちに示されることに対応します。


参考文献

鈴木淳市,中性子パルスの時間構造とSANSの性能,波紋,7(2),13(1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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