11.4  ガラス管を束ねた集束レンズで物質の微細構造を探る
   

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図11-7  マルチキャピラリーファイバー中性子レンズの外観と2次元集束像

中性子集束レンズは約110本の特殊グラスファイバーを束ねたものです。一本のグラスファイバーは、直径0.5mm、全長14cmの細管で、この管の内部に10ミクロンの穴が約1,200個開けられています。また、下の図は中性子集束レンズによる2次元集束像で、出口直後、出口から30mmの位置、出口から50mmの位置と、進むにつれて中性子のピークが現れてくる様子が分かります。

 


 金属材料や生体物質の微細構造を詳細に解明するためには強力な中性子場が必要です。中性子は電気的に中性なので荷電粒子のように磁場で曲げることはできません。また、光のような屈折現象も起りにくいために光学系のような取り扱いも不可能です。私たちは、高密度の中性子場を得るために、低いエネルギーの中性子が滑らかなガラス表面で反射する性質に注目しました。今回新たに開発した中性子集束レンズでは、特殊なグラスファイバーを束ねた多重毛細管(マルチキャピラリーファイバー)を用いています。この装置により、一本一本の毛細管に入射した中性子が毛細管内壁で反射を繰り返しながら進み、高密度の中性子場を得ることが確かめられました。図11-7には中性子が絞り込まれ、多重毛細管の出口前方で局部的に高いピークを表すことを示しています。この集束レンズによって集められたエネルギーの低い強力な冷中性子ビームは、金属中の不純物の解析や物質の表面観測に応用されています。


参考文献

K. Soyama et al., Application of Multi-capillary Fiber to Neutron Microguide Tube, J. Nucl. Sci. Technol., 32(1), 78 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1997
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