1.7 新しいレーザー分光法で微量アクチノイドの溶存状態を調べる
   

図1-13

光熱変位分光法(LIPDS)の原理

図1-14

U(IV)の吸収スペクトルとLIPDS(650 nm部分)の定量性

スペクトルから化学種の溶存状態がわかります。また濃度を変えたときの650 nmの部分のLIPDS強度変化をしらべると、従来の吸光光度法によるU(IV)の検出限界である0.1 mMよりもさらに1桁低い濃度まで定量的な測定が可能であることがわかります。


 環境中におけるアクチノイドの挙動をしらべたり、アクチノイド分離法の開発を試みるとき、化学種の把握が必要になります。私たちは、波長可変色素レーザーを用いて特定の化学種の特定箇所を選択的に励起する手法から出発し、その化学種を高感度で検出する技術を精力的に検討してきました
 光熱変位分光法(LIPDS)は、溶液中のアクチノイドが特定波長の光を吸収し、その電子励起エネルギーが熱に変換されるときに発生する弾性波を試料セルで受け、その際に生じるセル壁の微少変位を測定するもので、遠隔測定が可能な実用性の高い分光法です。
 また別に、ランタノイドやアクチノイドイオンの多くは、イオンのf 軌道の電子が励起されて少し波長の違うところで発光を起こします。このときの励起状態のエネルギーはイオンと結合している水分子のO-H振動のエネルギーレベルに移動しやすいことがあり、発光寿命の逆数はイオン内圏の結合水分子の個数と直線関係にあります。これを利用して化学種の溶液中の状態、樹脂等に吸着した状態における結合水分子数、すなわち溶存状態を探ることができます。


参考文献

T. Kimura et al., A Novel Laser-Induced Photothermal Displacement Spectroscopy (LIPDS) for Detection and Speciation of a Metal Ion in Aqueous Solution, J. Nucl. Sci. Technol., 34 (7), 717 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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