2.1 JT-60新型ダイバータでヘリウム灰の排出に見通し
   

図2-1

新型ダイバータの断面図とヘリウム灰排出実験  

 核融合炉心のヘリウムを模擬するため、60 keV、1.4 MWの高エネルギー・ヘリウムビームをプラズマ中心に入射し、ヘリウムの振る舞いを排気ポンプの作動の有無(開閉弁で操作)に対して調べます。

図2-2

プラズマ中のヘリウム密度の時間変化  

 排気系を作動してヘリウムを排気すると、ヘリウムビーム注入後約1.2秒でヘリウム密度は一定に達し、約4秒間定常に保たれています(プラズマの電子密度に対するヘリウム密度の割合(ヘリウム灰濃度)は約4%)。
 この実験でヘリウム排気時定数/エネルギー閉じ込め時間 〜4が得られ、ITERの必要条件10以下を十分実現できることがわかりました。


 JT-60では定常トカマク炉の開発を目標に研究を進めていますが、その計画の一環として昨年ダイバータの改造を行い、核融合炉の“燃焼灰”であるヘリウムを効率良く排出する実験に成功しました。重水素(D)と三重水素(T)の核融合反応で生ずる高エネルギーのヘリウムイオンは、炉心プラズマを加熱し、核融合燃焼を維持する働きをしますが、燃料のDやTと同程度の温度に下がってしまったヘリウムは適切に排出しないと、“灰”として燃料の密度を薄め核融合炉反応出力を低下させてしまいます。
 新型のダイバータは、ダイバータ板、バッフル板(中性粒子を遮蔽する板)などが真空容器内下部にW字形に配置され、粒子排気系を備えた設計中の国際熱核融合実験炉、ITERと同形式のものです(図2-1)。実験は定常運転に好都合と考えられている適度な粒子閉じ込め劣化を伴ったHモード閉じ込めのプラズマ中心部に、高エネルギーのヘリウム・ビームを連続的に入射して核融合炉心のヘリウムを模擬し、ヘリウムの排気を行った場合と行わない場合のプラズマ中のヘリウム密度の変化を調べました。図2-2に結果を示します。この実験によって、ITERの設計指針となっているヘリウム灰濃度を10%以下に保つための条件が実現できることが示されました。


参考文献

A. Sakasai et al., High Performance and Steady-state Experiments on JT-60U, Proc. 17th Symp. on Fusion Engineering, Oct. 6-9, 1997, San Diego, California, 18 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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