2.2 新型ダイバータ、JT-60長時間運転にも効果
   

図2-3

ダイバータ改造前後の積算加熱入力と炭素不純物量の比較

 改造後のデータの加熱停止はJT-60加熱装置の加熱時間の制約によるものです。

図2-4

高性能プラズマを定常的に9秒間維持  

代表的なデータは、プラズマ電流1.5 MA、トロイダル磁場3.6 T、加熱パワー20〜25 MW、中心イオン温度約1億度。閉じ込めは約70%改善されました。


 ダイバータ改造後のJT-60実験のもう一つの成果は、長時間運転性能が大幅に向上したことです。閉じ込めの良い高性能のプラズマを定常状態で長時間維持するトカマク運転方法の開発は、JT-60の中心課題の一つです。これまでの実験では、炭素不純物や粒子と第一壁との衝突などの相互作用の増加による周辺プラズマの性能劣化によって、加熱入力23 MWの高性能プラズマの維持時間は3秒程度に抑えられていました(積算加熱入力で約70 MJが限度)。
 新型ダイバータによる実験では、ダイバータの形状効果や排気効果が狙い通りに働いて、ダイバータ部で生じた炭素不純物や中性粒子が主プラズマに混入する現象が著しく抑制されました。図2-3はダイバータ改造前と改造後の炭素不純物量を積算加熱入力(加熱パワー×加熱時間)について比較したものです。新型ダイバータでは加熱入力が約200 MJに達しても不純物量はほぼ一定の低い値に抑えられていることがわかります。この結果図2-4に示すように、良い閉じ込め状態のプラズマをほぼ装置の運転限界である9秒間にわたって定常的に維持することができました。今後はさらに長い時定数をもった電流分布の変化などがプラズマの定常維持に与える影響を調べることが可能になると期待できます。


参考文献

H. Shirai et al., Recent Experimental and Analytical Progress in the Japan Atomic Energy Research Institute Tokamak-60 Upgrade with W-Shaped Divertor Configuration, Phys. Plasma, 5(5), 1712 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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