2.4 “比例則”でプラズマの閉じ込めを考える
   

図2-7

Hモード閉じ込めのプラズマ圧力(熱エネルギー)の分布  

Hモードの閉じ込めは、圧力が急に立上るプラズマの境界付近にしばしば弱い不安定性を伴います。このタイプのHモードに対して新しい比例則を導きました。

図2-8

新しい比例則と実験データの比較  

 新しい比例則による計算値と実験データが良く対応することがわかります(ほぼ対角線上にデータが並んでいる)。はJT-60のデータ、は他のダイバータトカマク装置のデータです。この比例則によるITERの閉じ込め時間の予測値(約5秒弱)をで示します。


 核融合プラズマの熱エネルギー保持の性能は、“エネルギー閉じ込め時間”で評価しますが、これを理論的に導くのは難しく、専ら“閉じ込めの比例則”を使った評価、予測が行われています。これは多くの実験データを統計的に処理して、閉じ込めの時間に関係する主要な物理量(磁場の強さ、プラズマ電流の大きさなど)に対する依存の仕方を求め、すべてのデータを統一的に説明できる一つの関係式を定める方法です。実験や理論の進展に応じて、これまでに多くの比例則が提案されています。
 私たちが最近提案した新しい比例則は、閉じ込め性能の優れた、プラズマ周辺に適度な不安定性を伴う“Hモード”というタイプに関するものです。図2-7に示すように、このタイプの閉じ込めでは、プラズマの圧力分布が、プラズマの境界近くで急激に立上る土台の部分の熱エネルギー(W0)と、なだらかな形をした中心部分(W1)とに分けられることが知られています。エネルギー閉じ込め時間は全エネルギーと加熱入力パワーとの比です。そこで全体の熱エネルギーをこの二つの部分の和として考え、物理的には、W0 の部分はプラズマの磁気流体的安定性により、またW1 の部分はプラズマ中の熱や粒子の流れによって支配されるものと考えて詳細なデータの解析・処理を行い、新しく比例則を導き出しました。この比例則は、図2-8に示すように多くの実験データと良く一致する結果を与え、ITERの物理設計の基礎である閉じ込め評価作業でも注目されています。


参考文献

T. Takizuka et al., An Off-Set Non-linear Scaling for ELMy H-mode Confinement, Plasma Phys. Control. Fusion, 40(5), 851 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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