2.5 プラズマの閉じ込めをマイクロ波で探る
   

図2-9

マイクロ波反射計の原理

図2-10

反射層でのマイクロ波の振る舞い

図2-11

新解析法により得られたJFT-2Mのデータ

(a) 密度1.83×1019 m-3の反射層の密度揺動の大きさ (周波数20〜200 kHz)
(b) 密度0.97×1019 m-3の反射層の密度揺動の大きさ (周波数20〜200 kHz)
(c) (a)(b)それぞれの反射層の動き、負号はプラズマ内部を表わす。

プラズマは731ミリ秒を境にLモードからHモード状態に変化し、このとき密度揺動が減少しています。また(a)と(c)とから、反射層の揺動の減衰は主にプラズマ周辺部で局所的に起こっていることがわかります。

 


 プラズマ中に生ずるミクロ不安定性がプラズマ閉じ込めに及ぼす影響を明らかにすることは、核融合プラズマ物理の重要課題の一つです。実験的には、不安定に伴ってプラズマ中に生ずる密度の時間的空間的変化(密度揺動)などの特性を詳しく調べることが必要です。密度揺動はマイクロ波反射計を使って測定します。プラズマ中に入射したマイクロ波は、その周波数に対応した特定の密度の反射層で反射されます。密度揺動があると反射層の位置が変動し、入射波と反射波の位相差も変動します。この位相差の変動を測定して密度揺動を求めます(図2-9)。
 プラズマからの反射波は反射層で単純に反射された波だけでなく、反射層での密度揺動によって引き起こされた入射波とは異なった周波数の散乱波も含んでいます(図2-10)。通常、散乱波の影響は十分小さいとしてデータ解析が行われますが、核融合プラズマでは、反射層の近くに大きな密度揺動が存在すると、散乱波の方が通常の反射波よりも大きくなり、解析不能となる場合があります。私たちはこの現象を詳しく検討し、通常の反射波と散乱波とを精密に分離するために、スペクトル解析とローパスフィルターを用いた解析法 を考案しました。この方法によれば、散乱波の影響が大きい場合でも、反射層の電子密度と局所的な密度揺動の二つを精度良く同時に測定することが可能となります。図2-11はこの新しい解析手法によって、JFT-2Mのデータを解析した結果です。閉じ込めのモードが変化する際の密度揺動の減衰とそれが起こる場所の関係が初めて明らかになりました。


参考文献

K. Shinohara et al., A New Method to Analyze Density Fluctuation by Microwave Reflectometry, Jpn. J. Appl. Phys., 36, 7367 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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