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プラズマ電流の大きな大型トカマク装置では、電流密度が中心に集中した分布となり、しばしばプラズマの中心近くで閉じ込め磁場の構造の変動を伴う不安定が生じ、電子温度や密度が時間的にのこぎり波状の振動を繰り返す現象が観測されます。この振動はプラズマの急速な消滅(ディスラプション)の原因となることが知られており、これまで主としてプラズマを連続体と見なした流体モデルに基づく理論的研究が行われてきました。しかし高温のプラズマでは、プラズマの粒子としての集団的な振る舞いがより重要な役割を持つことがわかってきました。
私たちはこの不安定性の一連のミクロな過程を、プラズマの基本構成要素である粒子レベルから解析するシミュレーション(粒子モデル)を用いてより詳しく追究しています。実験により近い条件を模擬する一つのステップとして、図2-12に示すように中心にピークをもったプラズマの初期密度を与え、密度勾配を新たに計算に取り入れました。その結果従来の流体モデルでは予測されなかった電場がプラズマ中に生じ、この電場が磁場構造の変動過程をより複雑化することがわかってきました。この電場と閉じ込め磁場との作用によってプラズマの回転が生じ、密度分布に図2-12のような渦状の構造が現れます。不安定過程の最終段階では、密度分布は渦状の構造を経て平坦な分布に変わりますが、電流分布はこの不安定が起きやすい中心でピークした形を残したままとなることがわかり、実験結果と矛盾しないことがわかりました。
参考文献
T. Matsumoto et al., Gyro-kinetic Particle Simulation of m = 1 Internal Kink Mode in the Presence of Density Gradient, J. Plasma and Fusion Res., 75, 1188 (1998).
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998 copyright(c)日本原子力研究所 |