2.8 熱でトリチウム量を正確に計る
   

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図2-15

通気式熱量方式トリチウム計量ベッドの概念系統とトリチウム貯蔵量の校正曲線  

 トリチウム1 g当たり、4〜5 ℃の上昇、測定精度は25 g相当で1 %以下の統計誤差内となります。


 核融合炉では燃料として総量で数kg以上のトリチウムガスを保有し、これを除々に燃やします。トリチウムは水素の仲間で弱いベータ線を半減期約12年で放出し、ヘリウム(He3)になります。生物へのトリチウムの影響は水の形で体内に取り込まれると発生するので、トリチウムは極力隔離する必要があります。トリチウムは炉内に格納されますが、その総量をいつも正確に把握することが第一に重要です。核融合炉では、トリチウムガスは金属に吸着された状態で保管されます。この時、自らの出すベータ線で温度が上昇するので、ヘリウムガスで冷却し所定の温度環境を作ります。ヘリウムガスに移動する熱量を測定すれば金属に吸着されたトリチウムガス量が求められることに着目しました。課題は、要求誤差に対する精度です。図2-15には、上記のような通気式熱量方式のトリチウム計量を試験する装置の概念図と貯蔵量の計測値の関係を示します。結果として、最大貯蔵量である25 gの場合、統計的な測定誤差は1%以下であることが判明しました。熱量計測は、装置の熱伝導や輻射損失のため精度が上がらないという常識をくつがえす技術開発に成功した例といえます。


参考文献

T. Hayashi et al., Tritium Inventory Measurement by "In-Bed" Gas Flowing Calorimetry, Fusion Technol., 30 (3), 931 (1996). 0209

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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