2.10 複雑構造物を一気に作る金属接合新技術
   

図2-19 ブランケットの構造と試験体
 

(a)ブランケットの構造概念  

炉心プラズマを囲むように取り付けられるブランケットの一部を示します。ブランケットは、炉心プラズマから大きな中性子・熱負荷を受けます。運転条件によっては、多大な電磁力がブランケットに掛かります。

 

 

(b)HIPで製作された実規模モデルの試験体  

試験体の大きさは幅1.6m、高さ1m、奥行き0.4mです。


 核融合炉のブランケットは中性子の運動エネルギーを熱に変換し、熱出力を取り出す役割を持ちます。図2-19は、ITERのブランケットの構造を示します。プラズマ側からアルミナで強化された銅、ステンレス製冷却配管、冷却チャンネルを内蔵するステンレスブロック等の多層構造から成り立っています。このような複雑構造を接合して一つの構造体とします。高温等方加圧法(HIP)を適用して大型複雑構造体を温度約1,000℃、圧力凡そ150 MPaで一体化しようとする技術を開発しました。150 MPaは約1,500気圧に相当します。このような新しい技術は最近実現可能となりましたが、実用のためには、材料・工法の最適化や多くの工夫と信頼性試験の実績が必要不可欠です。熱サイクル破断試験等多くの試験を重ね、この高温等方加圧法は従来の溶接や蝋付けよりも優れた接合特性(すなわち、均一な接合、母材と同じ強度、変形が小さい特性等)を持つことが明らかになりました。この工法はITERのブランケット製作方法の標準工法となっています。


参考文献

S. Sato et al., Development for First Wall/Blanket Structure by Hot Isostatic Pressing (HIP) in the JAERI, Fusion Eng. Des., 39-40, 609 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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