2.11 世界最大電流容量の高温超伝導電流リード線
   

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図2-20

高温超伝導電流リード線の構造と配置  

極低温の超伝導コイルと電流を導入する常温の銅撚線を接続する部分に、高温超伝導体を使用して、極低温部への熱の侵入を低減します。

 

表2-1

ITER(60 kA、70本のリード線を想定)の場合の熱侵入や冷却規模の比較


 磁場閉じ込め核融合炉では、磁場を作る超伝導コイルは魔法瓶のような容器に入れて熱侵入を低減し、導体をヘリウムで冷却します。コイルに電流を流すのに外から電流リード線をつなぎます。従来はリード線として銅線を用いました。この場合の銅線は熱を伝える性質があり、過大な熱侵入は多量の液体ヘリウムを消費します。高温超伝導体はセラミック質のため熱を通しにくい性質を持っています。一方、高温超伝導体は導体成型が難しく、自分の発生する磁場で常伝導転移する等、大容量のリード線製作上の困難があります。図2-20に試作したリード線の構造と配置図を示します。超伝導体(Bi2223)セラミックを金添加銀の母材に納め、テープ状に加工しました。常伝導転移を防ぐため磁性体を挿入しました。このリード線は最大14 kAで安定に動作し、この時の熱侵入は銅線の場合の1/10以下となります。この方式ではリード線部にガス冷却を必要とします。結局、総合的には銅のリード線の場合の1/3の冷凍機運転電力でシステムを構成できます。表2-1にITERの場合の両者の比較を示します。


参考文献

T. Ando et al., Design and Testing of 10 kA Current Leads using High Temperature Superconductors for Fusion Magnets, Proc. 15th Int. Conf. on Magnet Technology, Oct. 20-24, 1997, Beijing, 847 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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