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核融合炉の超伝導線は極低温で強い電磁力を受けるので、そのまわりをジャケットで補強します。インコロイ908は鉄−ニッケル−クロム合金で4 Kでの強度が高い、熱膨張が超伝導体と類似する等の利点がありますが、従来の熱処理では、SAGBO現象により脆くなりひび割れが発生します。SAGBOとはStress Accelerated Grain Boundary Oxidationの略語で、温度823 K以上、応力200 MPa以上、酸素分圧1.33×10-2 Pa(一気圧中酸素濃度0.14 ppmに相当)以上が重なると発生します。Nb3Snの超伝導化熱処理温度は823 Kです。大型のコイル巻作業では200 MPa以上の残留応力は不可避です。そこで密閉容器を用い、酸素濃度を下げて熱処理を行う技術を開発し、SAGBO現象の発生を回避しました(図2-21)。超伝導線に付着する油や吸着ガスの除去が重要です。最初にSAGBOが発生しない温度範囲で、真空排気や純度の高いアルゴンガス供給を行い、酸素除去の具体的目安を得ました。酸素濃度が十分に低下(0.1 ppm以下)した段階で超伝導化熱処理を行います。酸素の少ない環境での大規模な金属熱処理の初めての成功です。
参考文献
T. Kato et al., Avoidance Method Study for SAGBO Cracking during Heat Treatment of an ITER CS Model Coil Conductor Using Incoloy 908 Jacket, Adv. Cryog. Eng., 44, 9 (1998).
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998 copyright(c)日本原子力研究所 |