2.13 銅より熱を伝えやすい三次元炭素繊維複合材の新製作技術
   

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図2-22

3次元炭素繊維複合材(CFC)の製作過程  

ケプラー繊維:400℃以上にすると炭化して消失する繊維、ピッチ:炭素化合物

図2-23

炭素繊維複合材の熱伝導度と温度の関係

 NIC-01、NIC-02は新しい開発品、他は既存の炭素繊維材料、ρは材料1 cc当りの重さを示します。

 


 炭素繊維複合材は優れた特性から用途が拡大しています。核融合炉の場合、炭素は軽元素であり、熱、機械強度が高いことから、ダイバータ板の表面材の候補の一つとなっています。ダイバータ板は炉心からでるプラズマの熱と粒子を排出する構造体です。炭素繊維複合材はフェルト状の炭素繊維に黒鉛粉を含侵させ高温で燒結して作成します。従来燒結・含侵を多数回繰り返さないと、質量密度や均質性の高い良い材料を作ることは不可能でした。多数回の燒結に要する電気代がコスト上昇につながります。そこで3次元の特殊な炭素繊維織り構造のフェルトを作成し、これに高温等方加圧法(HIP)により黒鉛を含侵させた素材を試作しました(図2-22)。HIP技術は金属接合用に開発されましたが、炭素繊維複合材では初めての経験です。2,000℃、200 MPaのHIPで理想的密度と高い熱伝導度の材料を効率良く実現できることが判明しました。図2-23には今回試作された各種の炭素繊維複合材の材料温度と熱伝導度の関係を示します。他分野で開発された新しい技術の応用で、材料技術開発が大きな進展をとげます。


参考文献

M. Araki et al., Development of 3D Based CFC with High Thermal Conductivity for Fusion Application, Proc. 19th Symp. on Fusion Technology, Sep. 16-20, 1996, Lisbon, 359 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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