2.14 1MWの高周波をらくらく通す人工ダイヤモンドの技
   

図2-24

化学蒸着で製作したダイヤモンド真空用窓

(a)金属接合する前のディスク
(b)金属接合時のディスク
(c)水による冷却構造を付加した窓

図2-25

ミリ波の通過によるダイヤモンド窓の温度上昇の経過

 ミリ波110 kW入射の場合、は実験値、実線は計算結果を示します。

 


 核融合炉ではプラズマを高温に加熱します。電子サイクロトロン共鳴加熱法は、自由空間を伝搬するミリ波を使うので、電力伝送密度やプラズマへの波の近接性に利点があります。ミリ波の発振はジャイロトロンで1 MW以上が実現可能となりました。しかし核融合炉とジャイロトロンの間には、両者を隔離する真空用窓が必要です。高周波損失の少ない窓材の開発が長く研究されてきました。最近の技術進歩は著しく、直径100 mm程度、厚さ2 mm以上のダイヤモンドが合成できるようになりました。純粋なダイヤモンドは高周波損失が少ないことは以前から知られていましたが、窓材としての大きさに不足がありました。ダイヤモンドで有名なデ・ビアース社では特殊な化学蒸着方法で大型ダイヤモンドの合成に成功しました。そこでこれを用いてダイヤモンドと金属を接合した水冷却構造をもつ真空用窓を開発しました(図2-24)。ジャイロトロンからのミリ波を通過させた場合の窓材の温度上昇の例を図2-25に示します。このデータから類推して1 MW入射の場合、温度上昇は約150度摂氏程度になり十分実用できます。ダイヤモンドの純度がさらに上昇すれば、温度上昇はさらに低くなります。これは技術の進歩が不可能を可能とした典型例といえます。


参考文献

A. Kasugai et al., Chemical Vapor Deposition Diamond Window for High-power and Long Pulse Millimeter Wave Transmission, Rev. Sci. Instrum., 69 (5), 2160 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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