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低温で電気抵抗が急激にゼロになる現象を超伝導といいます。超伝導を示す物質(超伝導体)を実用化するためには、磁場中での臨界電流密度(電気抵抗ゼロの状態を保ちながら流せる最大電流)をできる限り大きくする必要があります。臨界電流密度は磁場による磁束の挙動と密接に関連しているので、臨界電流密度−磁場−温度の関連性つまり磁気相図を明らかにすることが、超伝導体の実用化に向けて必須の研究課題です。
臨界電流密度は、図3-13に示したような磁化曲線(磁場の変化に対する超伝導体の磁化)の測定から求めることができます。非常に良質な高温超伝導体(YBa2Cu3Ox)を用いて、磁化曲線を求めた結果、高温超伝導体特有の磁束系の新しい相を見い出すことに成功しました(図3-14)。つまり、従来型の超伝導体(転移温度が25
K)では、温度を一定にして磁場を変えたとき、ある磁場の値以上では、常伝導に転移して有限の電気抵抗を持ち、むろん臨界電流密度はゼロでした。これに対して、図3-14の破線の矢印に沿って一定温度で低磁場から高磁場に変化したとき、臨界電流は有限−ゼロ−有限と、臨界電流密度有限の領域を挟んで臨界電流密度ゼロの領域が存在していることを見い出しました。1987年の高温超伝導体の発見以来、磁束系について新しい発見が次々になされ、物理学の体系が生まれつつあります。
参考文献
S. Okayasu et al., Reentrant Properties due to the Peak Effect in Untwinned YBCO Single Crystals., Proc. Int. Symp. on Superconductivities, Oct. 27-30, 1997, Gifu, 549 (1998).
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998 copyright(c)日本原子力研究所 |