5.5 誰でも見られます「むつ」船舶用原子炉のデータ
   

図5-10

我が国最初の原子力船

原子力船「むつ」は、原子動力により82,000 kmを航海しました。航海で得られた海象条件、船体運動及び原子炉プラント等のデータを約600本分の磁気テープに記録するとともに、建造から運航、解役までの全ての技術資料を体系的にデータベース化しました。

図5-11

原子力船データベースでは、実験データと運転要領(運転日誌)等の文書データが同一画面で確認できるとともに、原子炉機器図面や配管系統図等の文書データが同時に参照できるため効率的に舶用炉の研究が可能になりました。

 


 原子力船「むつ」は1970年に建造され、1990年から出力上昇試験を開始し、1992年に全ての実験を終了後、関根浜港にて解役を完了しました。国産技術により設計・建造された我が国初の原子力船開発の設計、建造、運転並びに解役等の技術資料を体系的にデータベース化し、整理・保存しました。さらに、我が国唯一の実船データが今後の改良舶用炉研究等の開発のみならず動力用原子炉の研究、船舶の研究等の分野で多方面に利用できるようにしました。
 原子力船データベースは、設計根拠に係わる技術資料、原子炉設置許可申請書、核・熱水力計算書等の設計・建造関連資料及び原子炉の運転に係る原子炉運転記録等の文書データと出力上昇試験及び実験航海を通じて取得した実験データから構成しました。
  実験データは、出力上昇試験、海上試運転及び実験航海の項目別に各種測定試験を階層的に登録し、各測定データに原子炉出力、主機回転数等のプラント条件、船速等の船体条件、波高、海水温度等の自然条件等の実験条件を関係づけて、多様な検索並びにデータ表示を可能としました。例えば、原子力船が同じ速力で航行する場合、波の高低により原子炉出力が増減する等、海洋環境条件が異なった場合の原子炉挙動の違いが簡便に確認できます。また、約24,000件の文書データは、スキャナーで読込まれた設計図やマイクロフィルム及び設計報告書等の原本の3種類に分類し、整備・保存しました。
 利用者は、原研において原子力船データベースを直接操作し、必要とする各種データをグラフ表示にて確認できるとともにデータを利用者の計算機に転送して利用することが可能です。現在まで大学や他の研究所等で原子力船データベースの一部が利用されてきましたが、全データの構築を終了したので、平成10年9月から全面的に供用を開始する予定です。


参考文献

京谷正彦他、原子力船データベースの開発・整備、JAERI-Data/Code 95-003 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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