6.4 放射性金属を廃棄物容器に再生
   

図6-10

鉄球を用いた鋳造型の概念

薄板型枠を除熱材である鉄球で囲み、この型枠内に溶湯を流し込み型枠と一体化させて廃棄物収納容器を鋳造します。

  図6-12

凝固時の温度分布の計算による解析

凝固時の型枠表面の温度変化を計算し、実験条件の設定・データの評価に供しました。

図6-11

想定した廃棄物収納容器の利用方法

極低レベルの金属廃棄物で作った廃棄物収納容器に放射能レベルの高い金属廃棄物を入れ、容器と廃棄物との隙間に低レベルの金属溶湯(充填材)を流し込み遮蔽、安定化します。

  図6-13

鋳造後の1/3スケール廃棄物収納容器

写真の左側が鋳造後の容器、右側が上蓋に取り付けられた試験用模擬廃棄物です。

 


 原子力施設の解体では、量は多いが放射能レベルの極めて低い金属と、量は少ないが放射能レベルの高い金属が発生します。放射能レベルの高い廃棄物のパッケージ化には、遮蔽効果を付加するために、厚手の金属容器を使わなければなりませんが、これを放射能レベルの低い金属で作れば、廃棄物の大きな有効利用になります。しかし、汚染金属で容器を鋳造するのにまた別の放射性廃棄物を作ってはならないし、容器は適切な強度を備えなければなりません。
 金属の鋳造時に、汚染する恐れのある鋳砂の代わりに鉄球を用いて冷却熱伝導体にし、放射性ではない薄い金属型枠 −これは鋳物と一体ものになりますが− に汚染金属を鋳込むのがこの開発の着眼点です。熱伝導率が、鋳砂の4〜5倍(鋼の1/10以下)の大きさになる鉄球のサイズと充填率、溶湯の温度と鋳込み速度等を、実験結果と計算解析結果を対比しながら選択し、所要の強度と鋳込み欠陥の少ない容器の試作に成功しました。放射能レベルの高い廃棄物の場合、一般に容器の重量は収納物の数倍〜数十倍にもなりますので、この新しい鋳造法による技術効果の大きさが期待できます。


参考文献

H. Nakamura et al., Casting Test for Manufacturing Recycled Items from Slightly Radioactive Metallic Materials Arising from Decommissioning, Proc. 3rd European Technical Seminar on Melting and Recycling of Metallic Waste Materials from the Decommissioning of Nuclear Installations, Jun. 11-13, 1997, Nykoping, Sweden, 79 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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