7.1 被覆リチウム粒子を用いたトリチウム製造
   

図7-1

被覆リチウム粒子の概念

セラミック被覆リチウム粒子を黒鉛スリーブに詰め、黒鉛ブロック内に納めてHTTRで照射試験を行います。

 

図7-2

被覆リチウム粒子からのトリチウム放出

LiAlO2を核としてアルミナ(Al2O3)で被覆したリチウム粒子を1,400 Kまで加熱するとトリチウムが容易に放出されることを示しています。

 

図7-3

黒鉛スリーブキャプセルの照射試験の位置

被覆リチウム粒子は黒鉛スリーブやキャプセルに納められ、HTTR側部反射体内で試験することになっています。

 


 高温工学試験研究炉(HTTR)を用いてトリチウムを製造する方法を提案しています。化学的安定性の観点から、LiAlO2を核とし、Al2O3、SiO2、ZrO2などのセラミックスを被覆した図7-1のような被覆粒子を用います。この被覆粒子はHTTR用被覆粒子燃料と同様の方法で製造します。たとえば、アルミナ(Al2O3)被覆の場合、アルミナの2重被覆とします。この被覆粒子を1,000 K以下で照射すれば、照射後1,000 Kに加熱してもほとんどトリチウムは放出されず、1,400 K以上で加熱すると容易にトリチウムを放出できることが分かりました。図7-2はそのことを示しています。また、被覆リチウム粒子の照射領域として見込まれる温度でセラミック被覆と核との化学反応の有無を調べた結果、化学的にも安定であることを確認しました。さらに、第2被覆層の引張り強度は1,100 Kまでは保存されることが予想されています。今後は、機械的健全性を実際の照射試験によって確認することが必要です。図7-3にHTTR炉心断面内での照射試験の位置を示します。
 この被覆リチウム粒子は核融合炉のブランケットに使用して、トリチウムを作り出すこともできます。


参考文献

山下清信他、高温工学試験研究炉におけるトリチウム製造試験のための被覆リチウム粒子の開発、日本原子力学会誌、40 (1), 65 (1998)

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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