7.2 多結晶セラミックスの破壊をミクロにみる
   

図7-4

黒鉛の引張り強さの破壊確率分布

新しい破壊モデルによる予測値と実験値とを比較しました。細い粒子の黒鉛(IG-110)では、気孔径パラメータ(Sd)を大きくすると(Sd=1.9 → Sd=2.0)、予測値と実験値は良く合うようになります。

 

図7-5

炭化ケイ素の曲げの強さの破壊確率分布

粒子の大きさが異なる炭化ケイ素について、予測値を実験値と比較しました。曲げ強さについても、新しい破壊モデルがおおよそ適用できることを示しています。

 


 多結晶セラミックスの微細構造を考慮した破壊機構を説明するモデルが最近開発され、引張り強さ及び曲げ強さを説明するのに成功しています。この破壊モデルは、平均粒径、気孔数密度、平均気孔径、気孔径分布パラメータ、粒子破壊靱性、試験片体積を考慮した確率論的破壊強度モデルです。このモデルでは、材料を同じ大きさの立方体結晶粒子の集合からなると仮定し、材料中に一様に、かつ応力軸にランダムな傾きを持って配置されたスリット状亀裂が結晶粒子を破壊して、成長することによって起こる材料の破壊確率を計算します。その破壊確率を計算するのに上記の6つのパラメータが必要になります。最初のモデルは引張り強さに適用できるものでしたが、それを曲げ強さにも適用できるように拡張しました。図7-4は黒鉛の引張り強さにこのモデルを適用したときの実験値と予測値との比較を示しています。これは、粗粒の黒鉛(PGX)では両者はよく一致していますが、微粒黒鉛(IG-110)では気孔径パラメータを大きくとると(Sd=2.0)よく一致します。これは、破壊には寸法の大きな気孔が支配的であることを示唆しているものです。炭化ケイ素の曲げ強さにこのモデルを適用したとき、図7-5のような結果が得られています。3種類の異なる粒子の大きさの炭化ケイ素について、実験結果がおおよそこのモデルで説明できることを示しています。


参考文献

中西幸紀他、メゾ微細組織を考慮したSiCセラミックスの確率論的破壊強度の考察、日本機械学会第10回計算力学講演会講演論文集、97(7)、323 (1997).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
copyright(c)日本原子力研究所