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原子炉で発生する熱は膨大な量にのぼります。それゆえ、少ない熱媒体で大量の熱を輸送する熱媒体の開発が必要です。私たちは、相変化物質を小さな球状のカプセルの中に閉じ込めたマイクロカプセルを液体の中に多数分散させて使用する熱媒体を開発しました(図7-6)。カプセルの中に閉じ込めた相変化物質が液体と固体との間の相変化をする際に吸収する大きな潜熱を利用して大量の熱を吸収し輸送しようとするものです。相変化物質をマイクロカプセル化することにより良好な流動性も確保しました。このような相変化物質を封入したマイクロカプセルを液体に分散させることによって、熱輸送量を液体の場合に比較して約30
%増加させることができました(温度上昇10 ℃、相変化物質オクタデカン、相変化物質の質量15 %、被覆材の質量15 %の場合:ただし、相変化物質としてさらに大きな潜熱を持つ物質を使用できれば原理的にはもっと大幅な熱輸送量の増加が得られます)。
さらに、この新しい熱媒体にはもう一つの優れた特性のあることが分かりました。それは、この熱媒体を熱交換器に使用した場合の伝熱特性が非常に優れていることです。とくに、熱媒体と熱交換器伝熱管との温度差が小さい範囲での伝熱特性に優れており、液体に比べて約40
%も高くなります(図7-7)。この特性は、原子力発電プラント等における排熱等低温の未利用熱を有効に利用するためには、特に必要とされる特性なのです。なぜなら、排熱等からできるだけ高い温度の熱エネルギーを得るためにはできるだけ小さな温度差で熱交換をさせる必要があるからです。
開発した新しい熱媒体にはこのように、核熱の有効利用に必要な特性を備えていることが分かりました。
参考文献
久保真治他、マイクロカプセル化相変化物質スラリーを用いた加熱水平円柱まわりの自然対流熱伝導、日本機械学会論文集B編, 64(625), 3013 (1998).
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998 copyright(c)日本原子力研究所 |