9.2 放射光ビームラインが完成
―重元素科学、材料科学に新しい光―    

図9-4

重元素科学用ビームラインの円偏光放射光
(平成10年2月撮影)

 

図9-5

材料研究用ビームラインの各種実験モード

白色実験ハッチで行う高圧実験は、白色実験モード(ケース1)と単色実験モード(ケース2)を研究目的に応じて使い分けることができます。単色実験ハッチで行う回折実験(ケース3)は、ミラーとモノクロメータで分光した単色放射光を用いて行います。

 

図9-6

重元素科学用ビームラインの外観

(ビームライン名BL23SU)実験ホール風景。ビームラインの手前が下流側で隣りのRI実験棟へ至っています。

 

 


 大型放射光施設SPring-8では可視光からX線まで様々な放射光を用いて固体物理や生命科学の研究が進められます。中でもX線を用いた研究はSPring-8での蓄積電子ビームのエネルギーが世界一高いという特長が最も発揮できる領域です。今回原研では、これらのX線領域の放射光を実験エリアへ導く2つのビームラインを新たに完成しました。
 重元素科学用ビームラインでは原研独自の発想に基づいた偏向アンジュレーターを用いて、直線偏光、円偏光、楕円偏光などの放射光の偏光の状態が自在に制御された軟X線(0.5〜3 keV)を利用できることになりました。このビームラインでは、ウランなどの重元素物質の取り扱いを可能にする設備を完備し、電子状態・磁気状態の研究、固体表面化学状態の研究、生体関連物質の照射効果等の研究が可能です。
 また、材料研究用ビームラインでは、偏向電磁石からの幅広い領域の硬X線(5〜150 keV)が利用できます。今回整備されたこのビームラインの特長は、全エネルギー成分を含んだ白色実験ハッチと単色光を利用する単色実験ハッチに硬X線を自由に導くことができることです。この装置では、高温高圧など極限環境下での物質の構造変化、ランダム系物質や液体/固体界面の構造解析が可能となり、多くの研究者の注目を集めています。


参考文献

A. Yokoya et al., Soft X-ray Beamline Specialized for Actinides and Radioactive Materials Equipped with a Variably Polarizing Undulator, J. Synchrotron Rad., 5, 10 (1998). 原見太幹他、原研ビームライン、放射光、9 (5)、453 (1996).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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