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中性子科学の主要なテーマである中性子散乱研究の発展により、21世紀の物質科学が飛躍的な展開を遂げることが期待されています。特に、波としての広がりが高分子や生体物質と同じ位の大きさになる冷中性子は、生命の機構解明のための有力なツールとして有力視されています。そのためエネルギー精度の良い(高分解能)、強度の強い(高強度)冷中性子を発生させるための中性子散乱ターゲットの開発研究が進められています。高強度の冷中性子を得るには、まず陽子ビームをターゲットに衝突させて高速中性子を大量に発生させます。そして、それをターゲットの周辺に配置した液体水素などの極めて温度の低いモデレータ(減速材)により減速する方法が採られます。
中性子散乱ターゲットの性能はターゲットからの中性子発生量と、減速の効率によって決定されます。今回原研で新たに考案したターゲットシステムは、中性子の発生部には密度が大きく冷却効率の極めて高い液体水銀を用い、減速部には水素モデレータ本体と共に軽水によるプリモデレーターを装備した拡張型のシステムで、プリモデレーターの構造と配置に従来にない工夫を凝らしたものです。計算では既存の散乱ターゲットと比較して約40%もの飛躍的な中性子収率の向上が達成されることを示しています。この結果は現在世界で開発競争を行っている他の中性子散乱ターゲット開発グループにとっても極めて魅力的な結果として大きな関心を集めています。
参考文献
N. Watanabe et al., Toward a High-Efficiency Pulsed Cold Neutron Source, Proc. ICANS-XIV, June 14-18, 1998, Chicago.
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998 copyright(c)日本原子力研究所 |