10.2 加速器による消滅処理システムを実験炉で模擬する
   

表10-1

窒化物燃料の諸元

実効増倍率係数が〜0.93(中性子の増倍率14倍)の場合MA消滅反応比で実規模プラントの10 %程度の性能が確保できることを示しています。

 

図10-3

消滅処理実験炉の概念

窒化物燃料の燃料アセンブリとタングステンからなるターゲットサブアセンブリを示しています。

 

図10-4

消滅処理効率を決定する中性子のエネルギースペクトル

中性子の量はピーク値の近傍に集中していることから実験炉での窒化物燃料のスペクトルが実炉心を極めて良く模擬していることが分かります。

 

 


 放射性廃棄物の処分は原子力発電の安全性にとって最大の課題の一つです。中でもネプツニウムやアメリシウム等のマイナアクチノイド(MA)は数千年から数百万年もの長い半減期を持つため最も取り扱いがやっかいなものです。原研では中性子科学研究計画の一環として、これらの放射性廃棄物を効率よく処分する“加速器を利用する消滅処理プラント”の研究を進めています。このプラントは、廃棄物MAを未臨界炉心の燃料として利用する一方、加速器からの陽子ビームに起因する核破砕中性子を用いて連鎖反応を持続させます。その結果このプラントではMAを消滅処理すると共にMAの核分裂により発生する熱を発電に利用して加速器の運転に必要な電力を供給することができます。
 今回原研では、開発の第1段階として取り扱いのやっかいなMAに代わってウラン燃料炉心でプラントを模擬する実験炉についての概念設計を行いました。その結果、新たに提案された窒化物燃料を採用することにより(図10-3)、表10-1に示すように、陽子ビームエネルギー1.5 GeVで実効増倍係数が〜0.93(中性子の増倍率14倍)になるように諸元を調整した場合、MA消滅反応比でプラントの10 %程度の性能を確保できることが分かりました。また、消滅効率を決定づける中性子のエネルギースペクトルにおいてもMAで構成される実炉心を極めて良く模擬できることも分かりました(図10-4)。さらに、副産物としてテクネチウムやヨウ素などの長寿命核分裂生成物の消滅についても良い性能を示しています。これらの成果により実験炉の設計指針確立の見通しが得られました。


参考文献

佐々敏信他、Conceptual Design and Code Development for Accelerator-Driven Transmutation System, Proc. Int. Conf. on Future Nuclear System, Oct. 5-10, 1997, Yokohama, Japan, 435.

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1998
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