2.1 世界記録更新、JT-60のエネルギー増倍率
   


図2-1  炉心プラズマ性能の進展

今回の成果を得たプラズマの代表的な値は、イオン温度1.9億度、イオン密度48兆個/cm3、閉じ込め時間1.1秒、プラズマ電流2.6 MA、プラズマ体積53 m3でした。JETと比べて電流値は約80%、体積は約50%と炉心プラズマのコンパクト化が進みました。

 


図2-2  プラズマの性能QDTと不純物の関係

実効電荷数はプラズマの純度の尺度で、全く不純物のないプラズマ、すなわち純度100%のとき実効電荷数は1です。

 


 定常トカマク炉の研究を進めているJT-60では、平成9年に次世代の核融合実験炉ITERと同形式の新しいダイバータ(磁場の構造を工夫して、プラズマ中の不純物や熱を取り除く装置)を取り付け、これまでにプラズマ閉じ込めの改善を実証してきた“負磁気シアモード”と呼ばれる閉じ込め方式を用いて、プラズマ性能の一層の向上を目指してきました。
 この結果、平成10年6月の実験において、核融合エネルギー増倍率QDT(核融合反応出力とプラズマへの入力の比)1.25という世界最高性能の炉心プラズマの実現に成功しました。JT-60実験では重水素を用いており、QDTは重水素の半分が三重水素であるとして評価しています。同様な評価によるQDTの従来の最高値はJET(ヨーロッパ連合)の1.14でした(図2-1)。
 この成果は、主プラズマ中の不純物の低減を図る構造上の工夫を施し、排気機能を備えたW字型ダイバータと、負磁気シアモードによる先進的なプラズマ生成・運転手法を巧みに組み合わせることによって得られたもので、トカマクの定常運転の研究をさらに一歩前進させるものです。図2-2に不純物の減少によってプラズマの性能が向上した様子がはっきりと示されています。


参考文献

S. Ishida et al., JT-60U High Performance Regimes, Proc. of 17th IAEA Fusion Energy Conf., Oct. 19-24, 1998, Yokohama, IAEA-CN-69-OV1/1 (1999).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
copyright(c)日本原子力研究所