2.4 負磁気シアが鍵
   ―アルファ粒子起因の不安定性を抑える―
   


図2-6  TAE不安定性に対する負磁気シアの効果

(a)強い負磁気シアではTAEは観測されません。安全係数qが半径とともに減少しているプラズマ半径≦0.7の領域が負の磁気シアになっています。合わせて電子密度と磁場の圧力で規格化した高エネルギー・イオン(アルファ粒子の摸擬)の圧力βhの分布を示します。
(b)負の磁気シアが弱い場合(安全係数の減少の仕方が(a)より緩やか)、プラズマ半径がほぼ0.5の位置にTAEが観測されました。
TAEの安定化(a)や出現(b)の条件は理論的予測と良く合っています。
(c)観測されたTAEのスペクトル。

 


 高性能で安定な炉心プラズマを実証している“負磁気シアモード”は、定常トカマク炉へ至る有力な候補の一つと考えられ、私たちはいろいろな角度から研究を進めています。重要な研究課題の一つは、核融合炉で生成されるアルファ粒子によって引起こされる“アルフヴェン固有モード”(TAE:Toroidicity-induced Alfven Eigenmode)と呼ばれるプラズマの不安定性が、炉心の高温のイオンの閉じ込めにどのような影響を与えるかという問題です。
 JT-60では高エネルギーの負イオン源中性粒子入射を用いて、アルファ粒子を摸擬した実験を行いこの課題を追究しています。図2-6は“負磁気シア”の効果を示す実験結果です。負の磁気シアが十分強い領域では、高エネルギー・イオンの平均圧力がTAEを励起するような条件にあっても、TAEは安定化されて出現しません(図2-6(a))。しかし負の磁気シアが弱い場合(図2-6(b))には、安定化が十分でなくTAEが励起されます(図2-6(c))。実験で得られたTAEの安定化の諸条件は、シミュレーションによる予測とも良く一致しています。これまでの実験では、TAEの高エネルギー・イオンの閉じ込めに対する大きな影響は認められていません。


参考文献

Y. Kusama et al., Characteristics of NNB-Driven Alfven Eigenmodes, Burst and Chipping Modes in the Alfven Frequency Range in JT-60U, Proc. of 17th IAEA Fusion Energy Conf., Oct. 19-24, 1998, Yokohama, IAEA-CN-69-EX8/5 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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