2.6 プラズマを入れる容器壁の表面改質
   ―ボロン膜でプラズマ中の不純物が画期的に減少―
   


図2-8  ボロン蒸着システムの構成

デカボラン容器を加熱し出てくる蒸気に重水素とヘリウムを混合し多数のノズルから注入します。1回のデカボラン量100 gを50時間かけて注入し、JT-60容器内面積200 m2に平均膜厚200 nmが形成されます。

 


図2-9  ボロン蒸着前後のプラズマ中の酸素濃度

ボロンは酸素と結合しやすく膜内に酸素を固定します。同時に壁で粒子の跳ね返りも低減し対流損失を減らし、プラズマ閉じ込め特性が向上します。その結果、同じ加熱入力でプラズマの温度も飛躍的に向上します。

 


 核融合反応を効率良く実現するのには、炭素や酸素等の不純物密度を1%以下にしなければなりません。プラズマを閉じ込める真空容器は対流で漏れでる粒子にさらされ、その粒子は壁に含まれる不純物を叩きだします。空気中で製作された材料には酸素や水が含まれます。プラズマへの不純物の混入を防ぐため真空状態の容器内壁へのボロン膜形成を試みました。ジボラン(B2H6)は化学的に活性すぎて取り扱いに難点があります。そこで常温で固体のデカボラン(B10H14)を容器中へ加熱・蒸発・注入し蛍光燈のようなグロー放電で、ボロンと水素に分離し、ボロンのみを容器内に付着させる、いわゆる化学蒸着法を試みました。図2-8にこのシステムの構成を示します。図2-9にボロン蒸着の前後でのプラズマ中の酸素不純物の割合を示します。ボロン膜は酸素を固定してプラズマの純度を速やかに向上させることは明らかです。ボロン膜を大型容器内壁の全面に均一に蒸着させるために多くの工夫をこらしました。母材の性質を生かし材料表面の特性を変える材料開発は今後応用が拡大する領域です。


参考文献

西堂雅博、 JT-60のプラズマ対向材料研究、プラズマ・核融合学会誌、71(5), 372 (1995).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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