2.7 核融合炉の極端条件にも耐える丈夫なアルミナ膜
   生成技術開発成功
   


図2-10  プラズマ溶射による膜の断面の顕微鏡画像

ステンレス基材の上にニッケル−クロム中間材を介して230 μmのアルミナ層が形成されています。

 


図2-11  衝撃耐久試験装置の外観

重力を利用して試験体を繰り返し落下させ、アルミナ層の変化を調べます。一回の衝撃力は640 MPaで7万回の繰り返し後、アルミナの厚みが約50 μmに磨耗し電気絶縁は破壊しました。

 


 核融合炉は金属材料の複雑構造物です。また一種の電気回路でもあります。複雑構造物では電磁誘導等で渦電流が流れ、誤差磁場や過大な電磁力等の障害が発生します。そこで要所、要所は金属部品の間を電気的に絶縁する必要があります。絶縁物は耐放射線性や機械強度が強く、かつできるだけ薄いことが望まれます。そこでステンレス母材上に強固なアルミナ絶縁膜を形成する技術を開発しました。ステンレス中に含まれるニッケル(Ni)やクロム(Cr)を成分としアルミナと結晶構造が同じとなるようにニッケル80%、クロム20%の金属を中間材として溶射し、その上にアルミナを溶射するとアルミナ膜が飛躍的に剥がれ難くなることを発見しました。図2-10には形成されたアルミナ膜の顕微鏡画像を示します。図2-11には衝撃耐久試験を行う装置の写真を示します。試験の結果、230 μmのアルミナ膜は640 MPaの衝撃力に7万回程度は耐えることが明らかになりました。この衝撃力はステンレスが殆ど変形しきる限界に相当します。母材の性質を生かし材料表面の性質を改変することの成功例として多くの応用が可能な技術といえます。


参考文献

金成守康他、プラズマ溶射によって形成されたアルミナ電気絶縁コーティング膜の繰り返し衝撃荷重に対する耐久性、 JAERI-Research 98-029 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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