2.10 ITER粒子入射加熱装置に必要な100万ボルトの加速を実現
   


図2-16   核融合研究のための負イオンビーム源の開発の経緯と他の科学技術や産業への応用領域

 


図2-17   4段静電加速の負イオンビーム源の断面図

 


図2-18   加速された負イオンビームの軌跡

直径14 mm 3×3 列の電極から引き出され、加速された負イオンビームはイオン源から2 m下流でも各電極孔からの単一ビームが識別できます。収束性が高いといえます。

 


 ITERではプラズマを加熱制御する中性粒子入射装置は加速電圧100万ボルト(1 MV)、加速電流数十アンペアが1基あたり必要となります。この加速電圧では粒子の荷電交換変換効率のうえで負イオン源が利用されます。ITER技術開発の一環として、1 MVの粒子加速実験に成功しました。負イオンだけを収束させて加速するため、イオン源内で負イオンと共存する電子を抑制する電極構造や、イオン源の効率を高めるために周辺に設置する永久磁石の配置等多くの工夫をこらしました。加速電圧と加速電流の実績の経緯を図2-16に示します。図2-17にはイオン源と加速電極の断面構成を示します。図2-18には加速されたビームの軌跡像を示します。ITER技術研究開発のためには、今後加速電圧と加速電流の両立性の実証が必要ですが、このような技術は大型加速器や大型の新材料開発あるいは表面改質等の科学技術や産業応用領域を拡張する幅広い波及効果が期待されます。


参考文献

K. Watanabe et al., Development of a Multiaperture, Multistage Electrostatic Accelerator for Hydrogen Negative Ion Beam, Rev. Sci. Instrum., 69(2), 986 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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