3.3 新ターゲット/冷却材で高効率で安全な消滅処理システム
   

 表3-1 MA消滅用鉛−ビスマス冷却未臨界炉心の特性
 MA消滅性能を高める炉心を構築するため、燃料にはMAとプルトニウムの窒化物を使用します。この炉心のMA消滅率は年当たり10%で、百万kW原子力発電所10基から1年間に発生するMA 250 kgを消滅することができます。

 


図3-7  消滅処理システムの燃焼による実効増倍係数と加速器出力の変化

2年に1度燃料全体を交換し、MAのみを加えます。プルトニウムは初装荷時を除いては加えません。炉心パラメータを調整する事により、燃焼期間中の実効増倍係数、加速器出力の変化を十分小さくすることができました。

 


図3-8  消滅処理プラントの概念図

鉛−ビスマスは重いので、蒸気発生器、ポンプ、炉心支持構造を原子炉容器内に収納し、配管を極力排除して耐震性や耐熱応力性を高めています。

 


 原子力発電によって発生する放射性廃棄物には、非常に長時間に亘って放射能を持ち続けるマイナーアクチノイド(MA)が含まれます。このMAを放射能を持たない核種あるいは放射能を持つ期間が短い核種に変換することを消滅処理といいます。陽子加速器を利用した消滅処理システムでは、まず加速器から陽子ビームをターゲットに入射して核破砕反応によって多量の中性子を生産します。次いでこの中性子をMA燃料とする未臨界の原子炉に導き主に核分裂反応によりMAの消滅を図ります。
 新しいシステムでは、鉛−ビスマスを中性子生産用ターゲットと未臨界原子炉の冷却材に使用します。これまでは、冷却材としてナトリウムが考えられていましたが、新しいシステムでは化学的に安定な鉛−ビスマスを使い安全性の高いシステムとすることができます。このシステムでは、MAの高い消滅性能が達成できます(表3-1)。 実際、現在の100万kWの原子力発電所10基から毎年発生する廃棄物MAを1年間で消滅処理できます。また、全出力運転期間(10年)を通して、原子炉は常に未臨界であり、かつ未臨界の度合の変化を小さく保つことができます。その結果、加速器の出力変化を低く押さえられ、効率的に加速器を利用できます(図3-7)。このシステムのプラント概念は、蒸気発生器等の主要機器を原子炉容器内に原子炉と一緒に収納したシンプルなものとしました(図3-8)。これにより耐震性等一層の安全性向上が期待できます。


参考文献

Tsujimoto et al., Conceptual Study of the Lead-Bismuth Cooled Accelerator-Driven Transmutation System, Proc. of AccApp 1998, 137 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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