4.2 超並列計算機で見る百兆分の1秒の光のドラマ
   

 


図4-4  超高ピーク出力レーザーと固体薄膜との相互作用

相互作用をレーザー光の電場強度から見た図であり、赤色と青色の間隔が光の波長(約1ミクロン)に対応し、ハッチ領域は固体薄膜ターゲットを表しています。超高ピーク出力レーザーを固体薄膜に照射した場合、通常のレーザーの場合と異なり、光の一部が薄膜を透過します。

 


図4-5  超高ピーク出力レーザーと微粒子薄膜との相互作用

微粒子薄膜ターゲット(ハッチ領域)の場合には、固体のようにレーザーは反射するのではなく、表面で極めて強く吸収(異常吸収)されていく様子が明瞭に見られます(左図)。最終的に相互作用が完了すると全てのレーザーは完全に吸収されることを見いだしました(右図)。

 


 光量子科学研究の要となる百兆分の1秒の超高ピーク出力レーザー(Tキューブレーザー)を極限まで集光し、固体などに照射した場合、瞬時に超高エネルギー高密度プラズマが生成され、極短時間に従来予期されていない様々な現象が起こると言われています。これらの現象解析を進めるためには、大規模なプラズマ粒子シミュレーションが必要でしたが、今回、超並列計算機に最適化した計算で次のような興味深い結果が明らかになりました。この計算には2,502個のCPUを備え、125GFLOPS、106GByteの性能を持ち、通常のスーパーコンピュータの100倍以上の能力を発揮できる、関西研究所の超並列計算機Paragon XP/S 75MP834を使用しました。
 固体薄膜にレーザー照射すると表面でレーザーは反射されます。しかし、超高ピーク出力レーザーの場合には、一部が薄膜を透過します。さらに興味深いことに、この透過光はより細かな間隔の赤青縞から構成されており、レーザー波長の1/10以下の短波長(遠紫外線や軟X線)の強力なコヒーレント光が放出されることを見いだしました(図4-4)。
 また、サブミクロン程度の微粒子からなる薄膜に照射すると、上記の固体表面の現象とはまったく異なる様相を示し、レーザーはほぼ完全に吸収され、細かな間隔の赤青縞の強いX線や高エネルギー電子・イオンが発生することを発見しました(図4-5)。 このような状態は、地上では実現し得ない極限状態であり、宇宙においてのみ生じている超高エネルギー粒子集団を発生できるのではないかと考えており、早期の実験検証を期待しています。


参考文献

Y. Ueshima et al., Giga-Particle Simulation of Short Pulse X Ray Generation with Ultra-Shortpulse Relativistic Laser, Inst. Phys. Conf. Ser. No. 159, Proc. of 6th Int. Conf. on X-Ray Lasers, Aug. 31-Sep. 4, Japan, 1998, 325 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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