![]() |
||
|
![]() |
||
|
![]() |
||
|
レーザーは選択的に分子を特定の励起状態にもちあげるのに使われますが、また分子の振動回転状態、あるいは並進状態を測定するのにも使われます。 私たちは、超音速分子ビームと炭酸ガスレーザーを交差させる方法により、赤外多光子吸収後のハロゲン化エタン(CF3CHClFやCClF2CH3など)が単分子的にこわれてHClを生成するような反応を研究してきました。反応途中で、図5-1に示す3中心または4中心遷移状態を形成することが考えられます。例えば4中心遷移状態の場合、C-Cl結合が伸びると同時にClはもう一方のCについているHとの間で結合をつくり始め(図5-2)、ついにはHがClに向かって飛んでくるので生成したHClは激しく振動することが予想されます。3中心遷移状態の場合では、同じCに結合するClとHの間で結合が進み、おだやかにHClが脱離します。反応の道筋を追って原子を動かし、分子の構造変化によってポテンシャルエネルギーが変化する様子を詳細な量子力学に基づいた(ab initio MO)計算で求めると、反応経路のバリアーを越えたときに開放されるポテンシャルエネルギーが生成物の並進、振動、回転のエネルギーにどのように分配されるかを理論的に予測できます。そこで生成物HClの振動回転準位を実験的に測定することを試みました。 すなわち、異なる振動回転準位にあるHClを波長可変色素レーザー光の多光子吸収でイオン化させ、そのイオン強度を飛行時間型質量分析器でモニターすることでHClの振動回転スペクトルを求めました。そのスペクトルを解析して得られる振動回転状態の分布(図5-3)をみると、CF3CHClFから3中心遷移状態を経て脱離するHClの振動状態は低い(v=0、1、2の順に分布)ものが多いのに、CClF2CH3から4中心遷移状態を経て生じるHClは逆に振動状態が高い(v = 2、1、0の順に分布)ものが多く熱平衡からずれていることがわかります。図5-3のデータは、理論計算に基づく予想を裏付ける実験データとして最初のものです。 |
参考文献
A. Yokoyama et al., Rotational and Vibrational Energy Distributions of HCl Produced by Three- and Four-Center Elimination of HCl from Halogenated Ethanes, Chem. Phys. Lett., 307, 48 (1999) . |
ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選び下さい。 | ![]() |
たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999 copyright(c)日本原子力研究所 |