表6-1 133Xe放射性ステントの特徴
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冠動脈の動脈硬化による心筋梗塞等を治療する方法として、血管内に誘導したバルーンと呼ばれる風船をふくらませて流路を拡大する拡張法やステントと呼ばれる編み目状のパイプを留置して狭窄を防止する方法等が用いられています(図6-15)。しかしこうした血管形成技術だけでは30%前後の割合で再び狭窄を生じてしまいます。これは主に平滑筋細胞の異常増殖によるものと考えられています。その予防法として血管内に放射性微少線源を挿入し、放射線を照射して細胞増殖を抑えることが効果的であることがわかってきました。β線や低エネルギーγ線を放出する90Sr−90Y、32P、186Re、192Irなどのラジオアイソトープを一時的に線源として挿入したり、放射性ステントを留置する方法が試されています。 原研では、オンライン同位体分離器(ISOL:Isotope Separator On-Line)を用いてキセノン−133(133Xe)をイオン注入して放射性ステントを製造する独創的な技術を開発しました(図6-16)。これまでステント表面のβ線源として32P(半減期14.3日、最大エネルギー1.71 MeV)を用いる例が報告されています。これに対し133Xeは半減期が5.25日と短く、血管内照射が短期間であり血管内皮の再生を阻害しない、また、最大β線エネルギーが0.346 MeVと低く、正常組織への影響も少ない点で優れています(表6-1)。 この開発では、円筒状のステント全表面へ均一に放射性の133Xeイオンビームを注入する必要があり、上下駆動式回転照射装置を製作し、8本のステントを同時に処理できるようにしました。最大98 kBqの放射性ステントを製造することができ、動物実験で再狭窄率を低下させる効果があることが明らかになってきました。 |
参考文献
S. Watanabe et al., Production of Radioactive Endovascular Stents by Implantation of 133Xe Ions, Appl. Radiat. Isot., 51(2), 197 (1999). |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999 copyright(c)日本原子力研究所 |