7.1 図を見て操縦、大規模シミュレーション
   


図7-1  実時間可視化システムにおけるデータの流れと、本システムを放射能拡散予測システムWSPEEDIの計算に適用したときの例。右上の図には、東アジア諸国(6か所)の原発から放射性物質が放出されたときの拡散状況がシミュレーションの進行に合わせて表示されています。白い部分が放射能を表す粒子で、赤い矢印が風を表しています。

 

表7-1 データ転送方式と伝送データ量の関係


格子サイズが大きくなると画面表示が直ちに出来るようなデータ(画像データ)転送がシミュレーション結果(解析データ)をそのまま転送するのに比べて有利であることが歴然としてきます。

 


 計算機の速度が速くなりネットワーク環境が整ってきた結果、計算結果をより速くより高い品質でビジュアルに表現すること(可視化)の必要性が高まってきました。これは、高速の計算機によって出力されるデータの量が莫大であるために、出力結果の数字を図にしないと人間の理解する速さが追いつかないためです。また、巨大なシミュレーションの実行途中で可視化を行い、これに基づき計算機に指令を出せるシステムを用意することも必要です。
 このような必要性によって、以下に示すような新しい概念と技術に基づく汎用的実時間可視化システムを開発しました。まず、このシステムは、計算の進行に従って随時計算結果を可視化する機能(トラッキング機能)だけでなく、計算途中で計算パラメータや可視化パラメータを入力し計算そのものや可視化の仕方を制御するステアリング機能を備えています。大規模計算は多種類の大型計算機で実行されている可能性があり、図を表示する計算機(クライアント)もバラエティに富んでいます。そこで、次に、クライアントと大型計算機を結ぶ方法として私たちはインターネットで使われているWeb技術を採用しました。インターネットではWebブラウザーを使うことで受け手と送り手の計算機の種類に関係なく情報のやりとりが出来るようになっています。さらに膨大な可視化データの効率的な転送に関しては、既存の類似システムとは違って、すぐに画面表示できる状態まで加工したデータをデータ圧縮技術で縮小して転送する方式をとりました。これにより大幅な転送量削減が実現しました(表7-1)。図7-1にはシステムの流れ図が示してあります。


参考文献

村松一弘他、並列計算機上での流体解析のための実時間可視化システムの開発、JAERI-Data/Code 98-014 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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