7.2 個性を発揮、計算機たちの共同作業
   


図7-2  空気中の翼の運動を解析する連成計算のための計算格子

 


図7-3  ベクトル型並列計算機VPP300及びスカラー型並列計算機SR2201のプロセッサに対する計算コードの割り当て

 


図7-4  2種の並列計算機の個性を生かして計算コードの割り当てを行ったときの効率向上の様子。(a)VPP300とSR2201に適切な割り当てを行ったときの計算の流れと総計算時間。(b)VPP300だけで計算を行うときの計算の流れ。(c)それぞれの並列計算機を単独で、あるいは、協調させて使ったときの計算時間。かっこ内の数字は並列計算機のプロセッサ数を表しています。VPP300の15プロセッサとSR2201の5プロセッサを使って計算処理を適切に割り当てることで、それぞれの並列計算機を単独で用いた場合よりも計算時間の短縮が見られます。

 


 並列計算機の発達で、巨大な科学技術計算を実行することが可能になってきました。この時、複数の異なったモデル(方程式)で表される現象をどのようにして効率的にシミュレーションするかが重要な課題です。それぞれの方程式を解くのに並列計算機を用いるだけでなく、各モデルに適した構造の別々の計算機で並行して計算を実行すればより一層の効率向上が期待されます。
 従来の計算機で計算を行うときにはデータや命令は普通1つのプロセッサの中だけで処理されます。これに対し、1台の並列計算機による計算では、複数のプロセッサ間のデータ等のやりとりのためにMPIというライブラリを使うことが一般的になってきています。私たちは異なった種類の並列計算機も含む計算機ネットワークを対象にデータ等のやりとりが簡単に行えるライブラリSTAMPIを開発し、これにより複数のモデルからなる連成計算が効率的に行われることを実際の問題について確認しました。この問題は、空気中の翼の運動をシミュレーションするもので、流体コード、格子生成コード、及び構造コードを使って行う連成計算です(図7-2)。流体コードと格子生成コードはベクトル型並列計算機が、また構造コードはスカラー型並列計算機が個性を発揮できるコードです。STAMPIを使うことで、流体コードと格子生成コードをベクトル型並列計算機VPP300の各プロセッサに、また構造コードをスカラー型並列計算機SR2201の各プロセッサに割り当てて計算を行いました(図7-3)。個性を生かした計算機間の協調でより高い計算効率が達成されることが確認できました(図7-4)。


参考文献

T. Kimura et al., Local Area Metacomputing for Multidisciplinary Problems: A Case Study for Fluid/Structure Coupled Simulation, Proc. of the 1998 Int. Conf. on Supercomputing, Australia, 149 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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