7.4 大規模計算の名脇役、汎用格子生成システム登場
   


図7-8  スカラー型並列計算機SR2201を用いて、円柱周りの流れを計算するために122×122×16の格子を生成させた時の並列加速率。32個のプロセッサを用いた並列計算で約20倍の並列加速率が得られました。

 


図7-9  汎用格子生成システムを使った高速車両周りの格子生成の例。左上から矢印に従って、形状データ入力、境界上稜線格子生成、境界面上格子生成、を経て立体格子が生成されます。右図に最終結果をズームアップして表示してあります。これらの手順はGUIのために誰にでも容易に実行可能です。

 


 流体解析や構造解析を行うために、差分法や有限要素法を使って偏微分方程式を解いて答えを求める時には、まず、対象とする領域を適切な格子に分割します。このような格子を作ることは、今までは数値シミュレーションの脇役として陰に隠れた存在でした。しかし、超高速の並列計算機を使って大規模で複雑なシミュレーションが比較的容易に出来るようになって、格子生成ソフトは脇役ながらスポットライトに照らされる存在になってきました。それは、格子点の多い大規模計算では格子生成に要する時間が決して無視できなくなってきた上、境界の形が複雑になってきたりすると格子生成を行うこと自体とても複雑な作業になってくるからです。そこで、私たちは並列計算機対応の汎用格子生成システムの開発に着手しました。
 このシステムは汎用格子生成システムとして要求されるいろいろの機能を持っていますが、何よりも並列計算機対応であることに重点を置いています。例えば、数値シミュレーションに並列計算機を用いることを意識して格子生成を行うだけでなく、計算領域内部の格子点を求めるために偏微分方程式を解く方法は時間がかかるので格子生成自体も並列計算機を使って行うようにしてあります(図7-8)。データやパラメータの入力に当たっては立体幾何学的な想像力を必要とするので随所にGUI(図を使って視覚的に計算機と対話できるようにしたインターフェイス)の考え方を活用しています。このように、人に優しく高速処理の出来る汎用格子生成システムを開発することに成功しました。図7-9はこのシステムを使って高速車両周りの格子を生成するときの例を示してあります。


参考文献

村松一弘他、並列計算機上での構造格子生成システム、 JAERI-Data/Code 97-005 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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