8.1 中性子線を利用して沸騰する水の流れを測る
   


図8-1  中性子を利用した沸騰流計測システム

研究炉から導かれた中性子線を試験体内を流れる沸騰流に当てます。中性子は蒸気や金属で吸収されにくく、水で吸収されやすい性質があります。この性質を利用することで流れに含まれる蒸気量を詳しく計測することができます。

 


図8-2  熱的に非平衡な沸騰流中の蒸気泡観察例

流れを乱すことなく計測できる特徴を活かし、従来の方法では測定が難しかった狭い流路内の熱的に非平衡な沸騰流を詳しく計測できるようになりました。この例は、小さな蒸気泡が集まって大きな蒸気泡が形成されてゆく様子を示しています。

 


 熱的に非平衡な沸騰流の現象の把握や解析モデルの検討に資するため、研究炉(JRR-3M)の中性子線を利用した沸騰流計測システムを開発しました(図8-1)。中性子は、X線やガンマー線と異なり金属で吸収されにくく、水で吸収されやすい性質があります。この性質を沸騰流計測に利用することで、蒸気の量を詳しく測ることができます。また、センサーを流路に入れないため流れを乱さない特徴があり、従来測定が難しかった熱的に非平衡な沸騰流や狭い流路内の流れを計測できる長所があります。
 開発した沸騰流計測システムを用いて、狭い流路内を流れる熱的に非平衡な沸騰流中の蒸気泡を1/1,000秒、0.5 mm程度の詳しさで観察しました(図8-2)。また、画像データの処理を行うことで、従来測定が難しかった蒸気泡の体積割合(ボイド率)を定量的に測ることができました。
 計測されたデータは、原子炉や加速器等、幅広い分野の除熱技術の開発に役立っています。


参考文献

M. Kureta et al., Visualization and Void Fraction Measurement of Subcooled Boiling Water Flow in a Narrow Rectangular Channel Using High-Frame-Rate Neutron Radiography, TPI45: Proc. of 2nd Int. Symp. on Two-Phase Flow Modeling and Experimentation, May 23-26, 1999, Pisa, Italy, 1509 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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