9.3 高熱負荷試験で中性子照射した炭素繊維強化材の表面損傷を調べる
   


図9-6  ITERにおけるプラズマ対向材(CFC)の使用箇所

プラズマ対向材(CFC)は、ダイバータ(赤色部)のプラズマ対向面に使われます。

 


図9-7  高熱負荷を模擬した熱衝撃試験の概念

プラズマ対向材(CFC)の使用条件を模擬した熱負荷試験は、中性子照射による熱伝導率の低下の影響を評価する上で重要であるため、原子炉で中性子を照射した材料に電子ビームの高熱負荷を付与する試験が実施されます。

 

a) 熱衝撃によるCFCの損耗重量と中性子照射量の関係

 

b) 熱衝撃試験後のCFC損耗部(黄色線の囲い部)外観
熱負荷条件:500 MW/m2×40 ms


図9-8  熱衝撃試験後のCFC損耗重量と中性子照射量の関係、及び損耗部の外観

熱衝撃試験後の損耗重量(a)、及び損耗部面積(b)は、中性子照射量に対して増加することがわかりました。

 


 核融合炉で使用されるプラズマ対向材や対向機器は、プラズマから発生する高い熱負荷のもとで、中性子や粒子の照射を受けます(図9-6)。中でもプラズマ対向材として有望視されているもののひとつである炭素繊維強化材(CFC)は、中性子照射後の熱伝導率が未照射時の値よりも著しく低下することが知られており、そのため熱負荷時のCFCの損耗量が増加するのではと予想されました。しかし、今まで、このような使用条件を模擬した中性子照射済CFCについての高熱負荷試験(図9-7)のデータは、全くありませんでした。
 そこで、熱伝導率の低下が中性子照射済CFCの損耗特性に及ぼす影響を試験するため、材料試験炉(JMTR)を用いて556-569 Kで0.4 dpaまで中性子照射したCFCについて、プラズマディスラプションを模擬した500 MW/m2×40 msの高熱負荷試験を世界で初めて実施しました。CFCには、炭素繊維が同じ方向に揃えてある「1次元」と、任意の向きの炭素繊維が同一平面内にあり、この平面が積層してある「2次元」を使用しました。
 その結果、CFCの損耗重量は、中性子照射量の増加に伴い、直線的に増加することがわかりました(図9-8(a))。また、損耗部の面積も照射量の増加とともに拡大しました(図9-8(b))。これらの結果から、中性子照射によるCFCの熱伝導率の低下が、熱負荷時の損耗量を増加させることを明らかにしました。


参考文献

M. Uda et al., Disruption and Erosion on Plasma Facing Materials with Oarai Hot-Cell Electron Beam Irradiating System (OHBIS), Proc. 20th Symp. on Fusion Technology, Sep. 7-11, 1998, Marseille, France, 161(1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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