10.1 きれいに分けてしっかり保管、長寿命核種の再処理プロセス
   


図10-1  ヨウ素(I-129)の吸着カラム内分布

オフガス中ヨウ素は、実際の使用済燃料試験においてもウランを用いた予備試験と同様に吸着剤によって捕集される。

 


図10-2  PARCプロセスで提案するNp及びTc分離の各工程における分離性能

共除染工程でU及びPuとともにTBP有機溶媒に抽出されて移行するNpとTcは、還元剤n-ブチルアルデヒドと高濃度硝酸洗浄液を用いて効率よくU及びPuから分離できます。

 


図10-3  UとPuを分離する工程の抽出挙動

Puの還元剤としてウラナス(U4価、緑色)を用いることにより、有機溶媒中のPu4価(黄褐色)をPu3価(青色)に還元して水相に移行させU6価(黄色)と分離します。

 


 原研では、再処理工程の単純化と長寿命核種の工程内閉じ込めが同時に実現できる高度化再処理プロセス「PARCプロセス」を、NUCEFにおいて開発中です。
 これまでに、燃焼度が8,000 MWD/tU(原子炉運転200日)及び31,300 MWD/tU(900日)の使用済燃料それぞれ約1.5 sを用いて、PARCプロセスの分離性能を確認するための試験を行いました。
 ヨウ素(I-129)は使用済燃料の溶解の際にオフガス中に追い出し、シリカゲル粒子に硝酸銀を担持した吸着剤で捕集します。図10-1は今回の試験で吸着剤に捕集されたヨウ素の分布を示します。吸着剤カラムの入口付近で多く捕集されていることがわかります。主に燃料に含まれる窒素(N-14)が原子炉で照射を受けて生成する放射性炭素(C-14)は、アルカリ水溶液に二酸化炭素として捕集し、測定しました。測定結果から、燃料に含まれていた窒素は数ppm程度であったと推定されます。
 使用済燃料溶解液中のプルトニウム(Pu)とネプツニウム(Np)の原子価は大部分6価であること、また、Puは6価でもウラン(U)とともにTBP有機溶媒に効率よく抽出されることを確認しました。新たに設けたNpとTcの両分離工程により、有機溶媒中のNpとTcのそれぞれ95%以上を選択的に硝酸水溶液に逆抽出することができ、UとPuから分離することに成功しました(図10-2)。UとPuを分離する工程のPuの抽出挙動を図10-3に示します。
 二次廃棄物を発生させない溶媒洗浄剤として開発中のブチルアミン化合物(シュウ酸塩、炭酸水素塩)を用いて、放射線損傷等により劣化した有機溶媒に残留する放射性核種の洗浄性能を調べ、α線及びβ線放出核種に対し、それぞれ99.9%以上の除去率を得ることができました。
 これらの成果により、今後さらに、高燃焼度燃料(45,000 MWD/tU、1,400日運転)やMOX燃料を用いてPARCプロセスの性能を検証し、再処理施設、ひいては核燃料サイクルの経済性と信頼性向上に役立てます。また、閉じ込めた長寿命核種は、将来、消滅処理によって安定核種に変換し、環境への影響を無くすことを計画しています。


参考文献

H. Mineo et al., Dissolution Tests of Spent Fuel in the NUCEF αγ cell Including Dissolver Off-Gas Treatment, Proc. NUCEF '98 (1998).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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