10.2 ウランは地中で安定に固定される
   


図10-4  オーストラリア、クンガラウラン鉱床の地質学的変遷を示す断面図

約16億年前にウランを含んだ地下水が流れ込んで断層付近で濃集し、ウラン鉱床ができました(a)。その後安定であったが、約200万年前くらいに浸食により地下水が鉱床に浸入し、ウランが流れ出しました(b)。現在では、元の位置にある部分(一次鉱床)と地下水とともに流れて濃集した部分(二次鉱床)が観察されます。

 


図10-5  一次鉱床と二次鉱床の間で採取した岩石の電子顕微鏡写真

Aと示された部分がアパタイト、SLと示した部分がウランが濃集している部分。一次鉱床から流れたウランがアパタイトに吸着して沈着して、鉱物になったことが分かりました。

 


図10-6  二次鉱床付近で採取した岩石の光学顕微鏡写真(右)と電子顕微鏡によるウランの分析結果

ウランは鉄鉱物(黄色い鉱物)に最大で8重量%が濃集しています。

 


 物質は、地中では地下水とともに移動します。その際にいろいろな岩石(鉱物)に出会います。物質の振る舞いは物質の性質と地中に存在する鉱物によって異なります。では、ウランのような物質はどのように振る舞うのでしょうか。原研では、放射性廃棄物を地中に処分した場合、物質が地中において将来どのように振る舞うかを調べるため、ウラン鉱床などの調査研究を行っています。
 オーストラリアの北部にあるクンガラウラン鉱床を調査研究しました。この鉱床は約16億年前に生成し、その後安定でしたが約200万年前から酸素を含んだ地下水が浸入しました。その結果、ウランの一部が地下水中に溶けて、下流に流れました。この現象を計算コードを使って予測するとウランは数km離れた河川に流れ込んでもおかしくない条件にも関わらず、実際には約60 mしか移動していませんでした(図10-4)。この原因を明らかにするため、岩石を採取して、放射能を測定したり、光学顕微鏡、電子顕微鏡で調べました。その結果、ウランは地中に存在するアパタイト(人間の歯と同じ鉱物)の周り(図10-5)や、鉄鉱物の中に濃集(図10-6)していました。濃集の機構を調べるため、オートクレーブ(高温、高圧)を用いた加速実験、鉱物とウランの化学反応実験等を行い、アパタイトや鉄鉱物の表面に吸着したウランが地下水あるいは鉱物に含まれるリン酸などと結合して別の形に変わってしまった(結晶化)ことを明らかにしました。


参考文献

T. Ohnuki et al., Change in Sorption Characteristics of Uranium during Crystallization of Amorphous Iron Minerals, J. Nucl. Sci. Technol., 34, 1153 (1997).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1999
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