図1-13 NEXTプロセス概要
図1-14 CPF型遠心抽出器
図1-15 ホットセル内に設置した遠心抽出器
私たちは、PUREXプロセスをベースとした先進湿式再処理プロセス(NEXTプロセス)の研究を行っています(図1-13)。NEXTプロセスは、ウラン (U)を結晶として粗分離する晶析工程、U、プルトニウム (Pu)、ネプツニウム(Np)を共回収する簡素化溶媒抽出工程、抽出残存溶液から抽出クロマトグラフィーによりアメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)を回収する工程から成ります。
従来の再処理プロセスとして用いられているPUREX法では、U及びPuのみ回収されています。高速炉燃料サイクルでは、これらの元素に加えてマイナーアクチニド (MA)と呼ばれるNp、Am及びCmを積極的に回収します。MAは、半減期が長いα崩壊核種が同位体として存在します。これらを回収することによって、高レベル廃棄物の毒性低減や原子炉での燃焼による最終的な生成量の抑制が見込まれます。
PUREX法では、U及びPuのリン酸トリブチル(TBP)への抽出性を利用して回収を行います。MA回収に関して、AmやCmはTBPへの抽出性が低いため、TBPよりも抽出能力の高い溶媒を使用して高レベル放射性廃液から回収する必要があります。一方、Npは原子価の制御によりTBPへ抽出することが可能であり、U、Puと共に回収することが合理的です。また、高速炉燃料サイクルでは、低い除染度を許容することを前提に分配、精製工程を削除し、単サイクルによりU、Pu及びNpを一括回収するフローシートを設定しています。
照射済燃料を用いたU、Pu及びNpを共回収する一連の研究は、高レベル放射性物質研究施設(CPF)にて実施しています。抽出器は、ミキサセトラに比べて滞留時間の短い遠心抽出器を使用します(図1-14,図1-15)。NpをU、Puと共に抽出するため、フィード溶液を高硝酸濃度に調整します。これにより、NpはTBPに抽出されやすい原子価への制御が可能です。この簡素化溶媒抽出法においては、ほぼ全量のU、Puと共にNpについても約99%の回収が可能です。また、フィード溶液の高硝酸濃度化に伴い、遠心抽出器内においても高硝酸濃度環境となり、Npの原子価制御に有利に働いています。このような一連の研究においてフィード溶液の硝酸濃度を調整した結果、U、Pu及びNpの共回収が可能なことが分かりました。