図12-17 HTTRの燃料ブロック
図12-18 BP周りの中性子束分布の比較
図12-19 過剰反応度の測定値と詳細モデルによる測定値の比較
高温ガス炉は、その固有の安全性と高い出口温度を活かした水素製造等の多目的利用,高効率発電等の特徴から、次世代の原子炉の一つとして世界的に注目されています。HTTRは、我が国初の高温ガス炉として大洗研究開発センターに建設され、2004年に世界初となる原子炉出口冷却材温度950℃を達成しました。
HTTRの燃料ブロックは、六角柱状の黒鉛ブロックに33本の燃料棒を挿入したものであり、更にその角の部分に2本のBP(反応度調整材)棒を挿入しています。HTTRの炉心はこの燃料ブロック150体を積み重ねて構成しています(図12-17)。
HTTRでは、燃料温度を制限値以下に保ちながら出口温度950℃を達成するため、1炉心の燃焼期間(660日)にわたって炉内の出力分布の形をほぼ一定に保つよう、燃焼期間を通じて制御棒を炉心にあまり挿入せずほぼ一定の位置に保つ必要があります。そのため、燃焼期間中の反応度の変化はBPで吸収するようにしていることから、BPの燃焼挙動を正確に評価することはHTTRの運転管理上非常に重要です。
HTTRの臨界試験の結果から、過剰反応度が予測値より低いことが明らかとなりました。この予測精度の向上のためのモデル改良が行われましたが、その中で、BP棒の周りに黒鉛を配置し、その外側に燃料を配置するという、実際の形状を考慮した詳細なBPの評価モデル(詳細モデル)の開発が行われました(図12-18)。その結果、HTTRでは3.4wt%から9.9wt%の燃料を用いていますが、BP棒の周りに存在する黒鉛によって、燃料の濃縮度によってBPの効果が異なることを明らかにしました。このモデルを用いることにより、燃料の濃縮度の違いによるBPの効果を正確に評価でき、過剰反応度を精度良く評価することができました。
更に、BP棒周りの中性子束分布は燃焼に伴い大きく変化することから、燃焼解析に用いることができるようモデルの改良を行い、測定値との比較を行いました(図12-19)。その結果、解析値は燃焼期間を通じてほぼ一定の過剰反応度となり、測定との差は小さいことを明らかとしました。このことから、BPの燃焼による反応度効果の変化を模擬できていることが明らかとなりました。これに加えて、軸方向の出力分布もより正確に評価できることが明らかとなりました。
このモデルによって、燃焼が進んだ状態でも十分な精度で解析が行えることが明らかになりました。このことから、より高い燃焼度の炉心の設計が可能となり、高温ガス炉の燃料経済性等の向上に寄与することが期待されます。今後は更に燃焼が進んだ状態のデータを蓄積し、モデルの評価精度の向上を図る予定です。