図11-4 本研究で設定した合理的な処分空洞の概念図
図11-5 地下水シナリオの概念図
表11-1 評価シナリオの検討と安全評価で考慮するパラメータの例
原子力機構における様々な研究開発や、原子力施設の維持管理に伴い、放射性廃棄物が発生します。これらの放射性廃棄物を安全に処分することは、原子力の研究,開発及び利用を支障なく進める上で重要な課題です。本研究では、ウラン廃棄物の余裕深度処分における安全性を評価するため、数万年〜数10万年という長期間にわたる安全評価を進めています。
ウラン廃棄物の処分空洞の構成は、過去の検討結果に基づき設定しました。具体的には、ウランは半減期が極めて長く、人工バリア(低拡散層,低透水層等)に長期間の閉じ込め機能は期待できないことなどの理由から、人工バリアを設置しない合理的な処分空洞としました(図11-4)。
安全評価の対象としては、図11-5に示すような、地下に設置された処分施設内の放射性核種が、移行経路を介して生活環境にある河川等に移動したときの一般公衆に対する被ばくのほか、長期間が経過したあと、処分施設が地表に接近し、その直上あるいは周辺で活動する一般公衆に対する被ばく等が挙げられます。
安全評価では、一般公衆が長期間にわたり安全であることを確認することが重要となります。そのため、想定される気候変動や地形変化等の天然事象を、科学的データに基づき、将来の状態を予測し、何が、いつ、どのように変化するのかを設定する必要があります。表11-1に、評価シナリオの検討における天然事象と、それに対応する変化事象を安全評価におけるパラメータとして整理した例を示します。なお、パラメータについては、現状では具体的な処分場所が確定していないことから、既往文献等に示されている値を参考としました。
上記のような条件の下に、地下水シナリオに対して、想定しうる複数の評価シナリオの検討,パラメータ設定及び被ばく線量評価を実施しました。この結果、様々な変動を考慮しても、一般公衆に対する被ばく線量は十分小さいことを確認しました。
今後は、固有のパラメータ,事象変化の速度等を反映した、より詳細な安全評価を行うことが重要と考えています。