図1-2 1次系の信頼性向上設計の概要
図1-3 蒸気発生器の信頼性向上設計の概要
JSFRでは、熱輸送能力に優れたナトリウムを冷却材としています。ナトリウムは化学的に活性であることから、実用化に向けた信頼性向上のため、すべてのナトリウムバウンダリとナトリウム/水バウンダリを2重化するとともに、万が一のバウンダリ破損を早期に検出し、事故の拡大を防止する設計としています。
ナトリウムバウンダリについて 、1次冷却系は、図1-2に示すように配管に外管を設け、配管と外管の間を不活性雰囲気にするとともに、原子炉容器及びポンプ組込型の中間熱交換器にはガードベッセルを設け、ナトリウム漏えい事故時にも炉心冷却に必要な液位を確保します。2次冷却系は、外管と同等のエンクロージャを設け、配管とエンクロージャの間を不活性雰囲気にします。これらの2重化方策により、ナトリウム漏えい燃焼に伴う熱的影響やナトリウムエアロゾルの外部への放出を防止します。さらに、微小なナトリウム漏えいも検出可能な検出器を設置し、万が一のナトリウム配管の破損を早期に検出します。
ナトリウム/水バウンダリについて、蒸気発生器は、ナトリウムと水の熱交換に図1-3に示す密着2重伝熱 管を用いることによって、実質的に ナトリウム-水反応 の排除を目指すととも に、定期的な検査において、欠陥が検出された伝熱管を隔離することによって、 ナトリウム‐水反応事故を未然に防止します。 さらに、微小な水・蒸気の漏えいを検出可能な水素計を設置し、万が一の伝熱管破損を早期に検出します。
これらの設計の実現に向け、微小なナトリウム漏えいの検出器を開発しており、従来技術の難点であった信号信頼性の向上と高感度を実現しうる技術としてLIBS法(レーザー利用の発光分析法)を採用し、基本性能の達成見通しを得ました。また、密着2重伝熱管は、簡便な冷間引抜き加工法の採用と加工条件の最適化で工業的製作性を向上させるとともに内外管の冶金的分離でき裂の貫通を防止し、2重バウンダリの信頼性を向上させるための試作試験を実施しており、加工条件とき裂の貫通防止性能を把握し、実機長35mの製作見通しを得ました。さらに、従来よりも検出時間を短縮可能な水素計を開発しており、既存技術の改良による応答性の向上方策について検討し、基本性能の達成見通しを得ました。
今後、これらの冷却システム概念を詳細化し、実証炉の基本仕様を決定するとともに、要素研究成果を踏まえた冷却系システム及び各機器の実証試験等を進めます。