図1-4 実用FBRの核不拡散性を物質障壁の観点から向上させる炉心の設計方法とその効果
FBRの炉心燃料として使用するプルトニウム(Pu)は、核分裂性の同位体(239Pu,241Pu)が6〜7割程度を占め、残りは核分裂しにくい同位体(240Pu,242Pu,238Pu)からなり、原子炉級Puと呼ばれています。一方、炉心燃料の周りに設置したブランケットでは、ウランからPuへの転換を行う仕組みとなっており、ここで生成されるPuは核分裂性の同位体が9割以上と原子炉級Puに比べグレードが高くなります。
Puによる核拡散の懸念に対する方策としては、基本的に、国際原子力機関(IAEA)等による厳格な保障措置と核物質防護によって核不拡散性は高い状態に保たれます。また、炉心燃料とブランケットを一緒に再処理することにより燃料サイクルで扱うPu製品を原子炉級に保つことが可能です。それでも、多数基のFBRを導入する将来の本格利用時代には、これら以上に核不拡散性を向上させる社会的要求が生じる可能性があります。それに対する対応策の一例として、物質障壁の観点から核物質魅力度を下げる(すなわち、高グレードPuの生成を防ぐ)炉心設計を、炉心性能や燃料製造・取扱い等に深刻な影響を与えない範囲で検討し、図1-4に示す(1)〜(3)の方法の実現可能性を明らかにしました。
方法(1)では、ブランケットにPuを添加してPu富化度3〜5%程度の低富化度燃料とします。生成されるPuは初めから存在する原子炉級Puと自然に混ざり合い、高グレードのPuは生じません。方法(2)では、発熱が多いことから核不拡散性への寄与が大きいとされる238Puが、2〜4%程度添加したMAから生成されます。ただし、燃料製造・取扱いの観点から低発熱のMAが必要なため、MA供給量の制約を受けやすくなります。方法(1)と(2)について核物質魅力度を試評価した結果、炉心燃料と同程度なまでの低減が十分可能な見通しが得られました。
方法(3)は径方向ブランケットを持たない炉心であり、増殖性能維持のための炉心燃料の仕様変更を行うことで可能となります。軸方向ブランケットに対しては、方法(1)や(2)を必要に応じて適用します。
どの方法も実用FBRに要求される目標性能を満足しながら、Puの同位体組成に着目した核不拡散性の向上が期待できます。今後もそれぞれの得失を踏まえ、最適な炉心の姿を明らかにしていきます。