1-3 次世代FBRの安全性の向上を目指して

−炉心崩壊事故時の厳しい出力上昇の排除−

図 1-5 IGR炉と試験体

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図1-5 IGR炉と試験体

左はIGR炉心概念、右は制御棒駆動機構などを含む炉心上部外観。

 

図 1-6 炉心崩壊事故状況の模擬の概念

図1-6 炉心崩壊事故状況の模擬の概念

 

図 1-7 EAGLEプロジェクト試験におけるデータの例

図1-7 EAGLEプロジェクト試験におけるデータの例

試験体下部に設置した熱電対の温度指示値が上昇し高温物質の移動をとらえています。

FBR安全研究においては、発生確率が極めて低いような炉心崩壊事故についても溶融炉心物質のふるまいを実験的に確認し、そうした厳しい事故の場合でも影響を適切に抑制できることを示す研究をしています。

従来FBRの炉心崩壊事故については、大量の溶融燃料が炉心部にたまったままとなり、これが自由に流動することで出力が急上昇して厳しい事象推移となる可能性を考え、このような状況を想定した安全評価を行ってきました。一方、次世代FBRについては、炉心部から溶融燃料が早い段階で炉心周辺(上方または下方)へと流出するような内部ダクト付燃料集合体を採用するとともに、その有効性を実験的に確認する方針としています。

そこで、カザフスタン共和国国立原子力センターとの協力により、同センターの実験専用原子炉IGR(Impulse Graphite Reactor)を用いた試験研究EAGLEプロジェクトを実施しています。IGRでは、図1-5(左)に示すように炉心の中央に試験体を入れる孔が配置されており、この中に2重の圧力容器に収納された試験体を挿入して実験を実施しています。これまでに8kg程度の二酸化ウ ラン燃料を溶融させて炉心崩壊事故時の状態を模擬する実験を4回実施し、事象の進む様子を把握しました(図1-6)。図1-7はこの中のひとつの試験で観測された実験データの例です。ダクト内に設置した熱電対(TD1〜TD5)による温度変化のデータから、ダクト内を高温の物質が下方向に移動していることが分かります。このほか、トラップ内の熱電対(TT1〜TT3,TT5)からは高温物質のトラップ内への到達が把握されています。更に各部に設置した圧力計,音響計などのデータを総合的に分析することで燃料流出の全般的な様子を把握しています。この実験では溶融した炉心燃料がステンレス製ダクト構造を破り、下方向へと流出する過程が実現されています。なお、JSFRの設計では上方向に流出する内部ダクトを採用することとしており、この設計に即した体系での試験も実施しました。

このようなEAGLEプロジェクトの試験研究によって、内部ダクト付き燃料集合体設計では早期に溶融燃料が炉心周辺へと流出し、炉心部分に大量の溶融燃料が留まることがないことから、事故の影響を適切に抑制できる見通しが示されました。


●参考文献
Tobita, Y., Sato, I. et al., Development of Severe Accident Evaluation Technology (Level 2 PSA) for Sodium-Cooled Fast Reactors (3) Identification of Dominant Factors in Transition Phase of Unprotected Events, Proceedings of 2009 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP'09), Tokyo, Japan, 2009, paper 9127, 8p., in CD-ROM.