図1-25 電解精製工程における電解処理の概念(左)と希土類やアクチニド元素の陰極への析出電位(右)
図1-26 液体Cd陰極を使った溶融塩からのアクチニド一括回収実験の結果
将来の再処理技術の候補として、溶融塩電解法による乾式再処理技術の研究開発を行っています。金属電解法と呼ばれる乾式再処理プロセスでは、UやPuを電解により核分裂生成物(FP)等の不純物から分離回収します。図1-25に、電解精製工程でのUやTRU(Np,Pu,Am,Cm等のUよりも重い元素)等のアクチニド元素を電解処理により析出回収する概念と、陰極への析出電位が元素により異なるだけでなく、陰極の材質にも大きく依存することを示します。電解処理を行うための電解質には、塩化物(ここではLiClとKClの混合塩)を高温で融解させたもの(溶融塩)を使います。二種類の塩を混ぜると融点が下がり、低い温度で処理できるようになります。
細かくせん断した使用済金属燃料を金属製のバスケットに装荷して溶融塩に入れ、これを陽極とします。一方、陰極には鉄等の金属製の固体陰極とカドミウム(Cd)をルツボに入れて融解した液体Cd陰極の二種類を使います。陽極のUとTRU及び一部のFPは、電解処理により溶融塩中に溶解し、陰極に析出します。図1-25の右に示すように、陰極の電位を制御することで、固体陰極には回収したいUだけを金属として析出させることができます。次に、液体Cd陰極を使って、同様に陽極から元素を溶かしながら、UやTRUを陰極のCd中に合金として回収します。CdへのUやTRUの析出電位はお互いに近いため、陰極の電位を調整してもこれら元素を単独で分離回収することは難しく、まとめてCd中に回収します。希土類元素等のFPは析出電位がU等と離れているため、ある程度の分離が可能です。このように、UとTRUが一括回収されることは、すべてのアクチニド元素をリサイクル利用する将来の核燃料サイクルの方向性に合っており、また原理的に純粋なPuの分離が難しいことは、核不拡散の観点からも好ましい特長といえます。
このような熱力学的な検討を、液体Cd陰極を用いた実験によって確認した結果を図1-26に示します。アクチニド元素であるU及びTRUを一括で回収し、希土類元素であるLa,Ce及びNdから分離できる結果が得られ、熱力学的な検討と比較することにより、両者が一致していることを確認しました。
今後も、このようなデータを蓄積し、技術的に優れた電解制御手法を開発していく予定です。