地層処分は、原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物を、何万年にわたって生活環境から隔離しておくための対策です。我が国では、最終的に残る放射性廃液をガラス原料に混ぜ、高温で溶かし合わせてガラス固化体にします。これを、金属製のオーバーパックに封入した上で、地下300m以深の安定な岩盤の中に緩衝材で包み込んで埋設します(図2-1)。
地層処分は、候補地の選定から処分場の閉鎖まで100年を要する長い事業であるため、国が責任をもって継続的に技術基盤を強化し、社会の信頼を得ながら段階的に進めていくことが重要です。そのため、私たちは様々な観点から、地層処分の技術と信頼を支える研究開発に取り組んでいます。
まず、地層処分の舞台となる深地層を、 天然バリアとしての能力や人工バリアの設置環境という観点から、 総 合的に調べる技術を整備するため 、花崗岩と堆積岩を対象に二つの深地層の研究施設計画を進めています(図2-2)。2009年度末現在、東濃地科学センターでは深度約460m、幌延深地層研究センターでは深度約250mまで坑道を掘り進めており、それぞれに研究用の水平坑道も整備しました。実際の候補地での調査に先立って、必要な技術の信頼性を確認しておくことが目的です。地下の坑道は、深地層の環境や研究の様子を体験する場としても活用します。また、長期的な安定性を評価するため、火山や活断層,地殻変動などに関する研究を併せて行っています。
一方、東海研究開発センターでは、人工バリアや放射性物質の長期挙動に関する実験データなどをもとに、深地層の研究で得られる情報も活用して、処分場の設計や安全評価を行うための技術の開発を進めています。2009年度は、人工バリア周辺で起こる様々な物理・化学現象を複合的に解析するための手法や放射性物質の溶解・移行に関するデータベースの整備などを行いました。
また、このような研究成果に基づき、地層処分の安全性を支える論拠や科学的知見を知識ベースとして体系的に管理・継承していくため、知識マネジメントシステムの開発を進めており、2009年度末にプロトタイプを公開しました。
我が国の地層処分計画は、2035年頃の操業開始に向けて、候補地の確保がまさに喫緊の課題となっています。私たちは研究開発を着実に進めると同時に、分かりやすい情報の発信や研究施設の公開などを通じて、地層処分に対する理解の促進にも努めていきます。