図2-12 高レベル放射性廃棄物地層処分システムの概念図
図2-13 高アルカリ性溶液に対するモンモリロナイトの溶解速度
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、長寿命核種を含むガラス固化体を収納した鉄製容器(オーバーパック)の周囲をしめ固めた粘土系緩衝材(圧縮ベントナイト)で覆い、深地層中に埋設します(図2-12)。圧縮ベントナイトには、物理的緩衝機能のほかに、低透水性及び吸着性により地下水中に溶けた放射性核種の処分場外への漏出を抑制する機能が期待されています。圧縮ベントナイトの特性は、主成分のモンモリロナイトの密度に依存するとされ、この機能を長期にわたり評価するためには、処分場で使用されるセメントから溶出するアルカリ成分によるモンモリロナイトの溶解挙動を明らかにする必要があります。
モンモリロナイト溶解挙動の定量的な評価に関しては、処分場環境よりはるかに低い固液比条件となる粉体状試料のアルカリ変質試験結果からモンモリロナイト溶解速度を提示している研究が多いですが、実環境での溶解速度とは異なる可能性があります。そのため、私たちはこれまで、圧縮ベントナイトの変質試験を実施し、その内部のモンモリロナイト溶解速度を定式化してきました。圧縮ベントナイト内のモンモリロナイト溶解速度は、粉体状試料の変質試験結果から導出されるモンモリロナイト溶解速度に比べて遅く、また、OH−活量依存性が大きい等、異なる傾向を示しましたが、その原因及び圧縮ベントナイト内のモンモリロナイト溶解メカニズムは未解明でした。
そこで、本研究では、不純物をほとんど含まない圧縮モンモリロナイトの変質試験を130 ℃で実施し、その結果と比較することで、圧縮ベントナイト内のモンモリロナイト溶解メカニズムの解明を図りました。圧縮モンモリロナイトの溶解速度は、圧縮ベントナイト内のモンモリロナイト溶解速度よりも速く、そのOH−活量依存性は小さくなりました(図2-13)。これら結果から、圧縮ベントナイト内ではモンモリロナイト以外の共存鉱物(非晶質シリカ等)の溶解に伴いOH−活量が低下し、モンモリロナイトの溶解が抑制されること、また、外部溶液のOH−活量が低くなると、ベントナイト内部へのOH−供給量が減少し、圧縮体内外におけるOH−活量の比が大きくなることが示唆されました。
本研究の一部は、経済産業省原子力安全・保安院(現 原子力規制委員会原子力規制庁)「平成20年度放射性廃棄物処分の長期的評価手法の調査」として実施しました。