図6-7 炉容器冷却設備
図6-8 水冷管昇温防止対策の有効性
高温工学試験研究炉(HTTR)による安全性実証試験のひとつである炉心冷却喪失試験では、制御棒を挿入させずに原子炉冷却材の強制循環を停止させ、炉容器冷却設備の冷却水を停止させます(図6-7)。これにより、自然現象のみで高温ガス炉の固有の安全性を確保できることを、実際の原子炉を使って実証することで、原子炉を止める機能や冷やす機能が働かない場合でもシビアアクシデントに至らない原子炉を設計できることを示すことができます。
一方、炉容器冷却設備水冷管の熱反射板のない部分に原子炉から直接入熱することから、原子炉の安全性は確保できるものの、財産保護の観点から局所的な温度上昇が懸念されました。万が一、水冷管温度が運転管理上の制限値を超えるおそれがある場合には、炉容器冷却設備の循環ポンプを短時間起動させれば温度上昇が抑制できます。しかし、短時間起動によって固定反射体ブロック等炉内構造物の温度に影響するかどうかについては、水冷管の形状が複雑なため計算による予測は困難でした。
そこで、現在は新規制基準適合確認のため原子炉を起動することはできませんが、安全・確実な試験手順を確立するため、ガス循環機からの入熱のみの非核加熱により原子炉を加熱し、炉容器冷却設備を停止させる試験を実施しました。水冷管の局所的な温度上昇箇所を特定するため、複数の熱電対を設置して水冷管温度を実測しました。
試験の結果、最高使用温度以下であるものの、運転管理上の温度制限を超えるおそれのある箇所を特定できました。炉心冷却喪失試験で着目すべき固定反射体ブロック,高温プレナムブロック,原子炉圧力容器,1次生体遮へい体の実測温度と並行して実施した数値解析結果との比較検討から、試験時間(7時間)に対して十分短い時間(5分)、循環ポンプを起動させたところ、水冷管の局所的な温度上昇を抑制でき、かつ水冷管の大きな温度変化に対して上記構造物温度への影響がほとんどないことが分かりました(図6-8)。
また、高精度な電磁流量計を設置して自然循環流量を計測したところ、一時的に増加したあと、減少に転じ、水冷管の冷却に効果がないことが分かりました。
本成果により、HTTRの再稼働後、直ちに本試験を実施するための試験手順を確立できました。高温ガス炉の固有の安全性を自然現象により確保できることをHTTRを用いて実証する安全性実証試験は、世界に注目されており、現在、国際協力研究として実施されています。