図7-1 高速増殖炉サイクル技術に関する研究開発の概要
原子力機構では、酸化物燃料を用いたナトリウム(Na)冷却高速増殖炉,簡素化ペレット法燃料製造及び先進湿式法再処理を組み合わせた概念を主な対象として、電気事業者の協力も得つつ高速増殖炉サイクル技術の実用化を目指した研究開発を2010年度まで進めてきました。東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故以降のエネルギー・原子力政策が定まるまでは、技術基盤の維持や安全性向上等に重点化した取組みを進めてきましたが、当該政策の見直し議論の結果を踏まえ、2014年度以降は、廃棄物の減容・有害度低減を目指した研究開発及び高速増殖炉/高速炉の安全性強化を目指した研究開発を国際協力を積極的に活用し実施する予定です。後者の安全性強化のため、既にNa冷却高速炉の安全設計要求の国際標準化に向けた活動を進めており、2013年5月には第四世代原子力システム国際フォーラム(GIF)で安全設計クライテリア(SDC)を構築し、現在はSDCに対応した具体的な設計方針を与えるための安全設計ガイドライン(SDG)の構築を行っています(図7-1)。本章では、高速増殖炉/高速炉の特徴を踏まえた安全性・信頼性の向上及び燃料サイクルの技術基盤に関する成果について紹介します。
仮に高速増殖炉/高速炉で炉心損傷事故が発生した際にも、損傷した炉心物質を原子炉容器内で保持し続けられる可能性を示すデータを取得しました(トピックス7-1)。
我が国が開発を進めるJapan Sodium-cooled Fast Reactor(JSFR)の建屋は、地震・津波はもとより、異常な強風,降雪,火災等に対しても高い耐性を確保しています(トピックス7-2)。
蒸気発生器の安全性確保の観点から重要な伝熱管破損時のNa−水反応現象については、反応ジェットの影響による破損伝播の発生可能性を評価する解析評価システムを構築しました(トピックス7-3)。
伝熱管探傷技術では、大型計算機を利用して、代表的な構造物である支持板と伝熱管に生じる磁場をシミュレーションする技術を開発しています(トピックス7-4)。
組成と製造方法を工夫し、高温強度と靱性,耐食性に優れた長寿命燃料被覆管として有望な材料を開発しています(トピックス7-5)。
高速増殖炉サイクルにおいて高速増殖炉/高速炉と軽水炉との併用期間の次世代再処理プロセスの確立に向けた基礎データを取得しています(トピックス7-6)。